上越事業所では日本アビオニクスから半導体テスト用のプリント配線板事業を譲り受ける段階で、それらの動きを見越して設備増強に着手してきた。
実際に高多層と呼ばれる30層以上のプリント配線板の需要が急増しており、小池氏は「今後もまだまだ増えると考えている。われわれのユーザーのニーズがシフトしている中で、工場の設備も高多層を中心とした要求に応えるために新しくしていかなければならなかった」と話す。
ただ、工場内は従来の設備で手狭になっていたため、2018年以降、2回に分けて増床を実施し、製造エリアを3300m2拡張した。それによって、工場の稼働を続けたまま、新しい設備が設置できるようになった。そして、極薄材料対応のエッチングラインを新設し、回路パターンをレーザーで直接描画するダイレクトイメージ装置を増設した。これによって、上越事業所ではフィルム露光からダイレクト露光に完全に移行した。
また、AOI(自動光学検査)装置を移設することで、工場内の回路形成工程の動線を最適化した。「エッチングの前後の工程が離れた場所にあったので、増床を機に同じエリアに集約させて無駄な取り回しをなくした。モノの移動を最小限にし、人も効率的に配置できるようになった」(小池氏)。生産能力は従来比で約1.4倍になった。
新設した2つのエッチングラインでは内層用の0.03mmの極薄材料から、外層用の8mmの厚板材料までの自動搬送を行い、ダイレクトイメージ装置の増強と合わせて高精度の回路形成と高精細のエッチングラインによる線幅精度向上(伝送特性安定化)を実現した。
高精度の穴あけ装置も増設し、直径0.1mm以下の極小径穴加工の能力を高め、110層を超える超高多層、ビアピッチ0.23mmに対応する高精細基板の提供が可能となった。
「設備の移設によって空いたスペースを使い、次の戦略的な投資を準備していく。増床によって、そういうサイクルを回すスペースを作ることができた。半導体は今後も波は合っても減ることはない領域だと思っている。そこに対して継続的に投資していく」(小池氏)。
100層超のプリント配線板を作れる工場はグローバルで見ても数えるほどしかないという。高多層、高精細のプリント配線板を武器に事業を展開していく。
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