道具の収納や整理整頓に欠かせない「ツールボックス」の仕組み100円均一でモノの仕組みを考える(2)(2/3 ページ)

» 2024年06月25日 09時00分 公開

ツールボックスの構造と作られ方

 写真で見比べてみても、3種類のツールボックスの違いが分かりづらいため、今回も簡略化した図を用いて説明していきます。

フタと本体の合わせ部分

 まずは共通項目として、フタと本体の合わせの部分を見ていきます。フタと本体の合わせ部分は互い違いの構造になっています。単にフラットに合わせただけだと、樹脂の成形収縮率や普段使用する際にかかる力の影響により、フタと本体がズレてしまいます(図4左)。このズレを解消するためにフタと本体の合わせは互い違いの構造になっているのです(図4右)。

フタと本体の合わせ部分 図4 フタと本体の合わせ部分[クリックで拡大]

ヒンジ部分

 次に、ヒンジの部分を見てみます。ヒンジはフタを開くための軸の役割を果たしていますが、ツールボックスの種類によって、フタと本体が一体になっているもの(一体構造)と、フタと本体が分かれているもの(分割構造)とに区分できます。

 一体構造はフタと本体が1つの部品になっています。ヒンジの部分を薄く成形することで曲げることが可能となり、フタを開閉できるようになります。ヒンジ部分が薄肉のため、成形性が悪く、強度面でも不安が残ります(図5)。また、樹脂を曲げることでヒンジとしての用途を満たしますので、樹脂の材料に依存します。今回のツールボックスはPP(ポリプロピレン)でできていますが、これがPC(ポリカーボネイト)のような固い樹脂ですと曲げるという用途には不向きです。

フタと本体が一体構造になっているツールボックス 図5 フタと本体が一体構造になっているツールボックス[クリックで拡大]

 一方、分割構造はフタと本体が別部品になっており、ヒンジ部分をはめ込むことでフタが開閉できるようになります(図6)。別部品ですので一体構造のような薄肉部分がなく、成形性や強度面の不安がなくなります。ただし、一体構造がフタと本体で1つの部品なのに対し、分割構造の場合はフタと本体の2つの部品で構成され、部品点数が増えてしまいます。

フタと本体が別部品で構成されているツールボックス 図6 フタと本体が別部品で構成されているツールボックス[クリックで拡大]

 ちなみに、100円均一ショップでは見掛けませんでしたが、ホームセンターなどではヒンジ部分に軸の入ったツールボックスも売られています。軸を別部品にすることで十分な強度を引き出せますが、構造が複雑になり部品点数も増えるため、先に紹介した2つのツールボックスよりもコストがかかります(だから100円均一ショップで見掛けないのかもしれませんね)。

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