近年、学生たちから就職先としての製造業の人気が低下傾向にある。本連載ではその理由を解説し、日本の製造業が再び新卒学生から選ばれるために必要な「発想の転換」についてお伝えする。第4回は、学生に製造業の魅力を伝える青田創りの実践例を紹介していく。
これからの製造業の採用活動には、短期視点で優秀な人材を探す「青田買い」ではなく、長期視点で優秀な人材を育てる「青田創り」が求められる。第3回では、学生に製造業の魅力を伝える青田創りのポイントをお伝えした。今回は、青田創りの実践例として、機械/電気系の学生を対象としたキャリア支援イベント「しごとーく」を紹介する。
しごとーくは、低学年の学生を主な対象としたキャリア支援イベントだ。エッジソン・マネジメント協会が展開する青田創りの試みの1つである。
次世代を担う若者を育むことを目的とし、本来であれば採用競合に当たる企業同士が手を取り合い、ともに登壇するのが大きな特徴である。2023年度は、日立製作所、パナソニック オペレーショナルエクセレンス、川崎重工業などが参加した。
青田創りをテーマとしたことのイベントの内容を参考にすることで、青田創りの具体的な方法や、その意義を伝えたい。読者の方々も自社の採用活動の仕組みや、学生とのかかわり方を見直すための、何かしらのヒントが見つかると信じている。製造業の採用活動の在り方を再検討する機会を作れれば幸いだ。
しごとーくは、登壇者個々人のキャリアや製造業の仕事の魅力が学生に伝えることを最優先にしており、以下2つのプログラムで構成されている。
(1)現場のエンジニア3人による「生き様」プレゼンテーション
(2)プレゼンテーションの内容をもとにした座談会
しごとーくには大きく分けて6つの特徴がある。
就活が本格的にスタートする大学3年生や大学院1年生になると、すでに製造業に対するイメージが固まっていることが多い。そのため、しごとーくは就活前の学生を対象にしている。進路選択の軸ができる前に魅力を伝え、就活の選択肢を増やすために情報提供をしている。
Webサイトや各種の採用媒体では知ることができない情報提供を重視し、各企業登壇者の具体的なキャリアや葛藤を伝えている。
人事などの採用担当者が登壇するのではなく、現場で働くエンジニアが登壇している。業務内容や仕事のやりがい、仕事を選んだ理由、将来の夢など、より個人的で具体的な情報提供に努めている。
「しごとーく」は大学と企業がともに創り上げている点に特徴がある。低学年の大学生との接点を持つことは難しい。大学と一緒に青田創りの場を創ることで、低学年へのアプローチが可能となる。
しごとーくは1社単独で実施するイベントではない。複数企業が参加し、プレゼンをすることで、学生がさまざまな企業におけるキャリアを一度の機会で把握できるようにしている。
登壇するエンジニアのために事前研修を実施し、複数の登壇機会を設けている。これにより、第3回で詳しくお伝えしたように、仕事の魅力や製造業で働く誇りを再認識する機会になり、プレゼンテーションスキルの向上も実現するなど、エンジニアの成長にもつなげている。
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