続いて、企業部門の金融勘定を眺めてみましょう。
たくさんの項目が出てきますね!どのように読み取れば良いでしょうか?
さすがに企業だと項目が多いですね。家計と同様に期間を区切って見ていくと分かりやすいと思います。まず、1989年までの成長期では純借入が増え続けていますが、中でも負債側の借入(赤)が増大しています。
そうですね、1989年には50兆円近くに達しています。
その他の金融資産(濃緑)や負債(茶)も多いようですが、この時期は主にどのような項目が多かったのでしょうか?
実は金融勘定のデータは、日本銀行の資金循環統計の方が詳しく細分化して公開されています。資金循環統計を参照すると、この時期にその他の金融資産/負債で多かったのは、企業間取引/貿易信用だと分かります。
つまり、売掛金/買掛金や約束手形のように、売り上げには計上されていても、まだ回収されていない分ですね。この時期、同じくらいの額が金融資産にも負債にも計上されています。つまり、多くが相殺されることになりますね。
なるほど、1990年〜1997年のポストバブル期は、負債のうち借入が縮小してほぼゼロになり、急激に純借入が縮小しています。
そして1998年以降は、その借入がプラス側に計上されて、純貸出が大きくプラスへと転換していますね。
とても重要な挙動ですね。新規に借入を増やす分よりも、返済する分が上回っていたということです。
つまり、バブル期に過剰に増やした借入を、この期間では返済ばかりしていたということになります。あるいは、貸し剥(はが)しと呼ばれる金融機関による強制的な資金回収や、なかなか融資してくれない貸し渋りなどもあったといわれていますね。
その後は、リーマンショックで純貸出が大きく減少して、2009年頃からまた回復しています。このあたりから、負債側の借入もマイナス側に計上され始めていますね。
ただ、金融資産側のその他の金融資産が大きくプラスで、正味の純貸出もプラスの状況が続いています。
はい、これも重要な変化です。この時期、資産側のその他の金融資産で大きな存在感があるのは、対外直接投資です。海外現地法人などへの再投資分も含みます。リーマンショックや東日本大震災を経て、日本企業の海外進出が加速した状況が表れています。
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