ここで、熱をその理論に立ち返って考えてみる。図2に示す物質内のある位置において、「熱伝導」によって伝わる熱の移動量はその位置の温度勾配に比例することが実験的に分かっており、式6で表せる。
q[W/m2]は単位時間、単位面積当たりの熱量で「熱流束」と呼ばれる。λ[W/m・K]は熱伝導率で物質によって決まる物性値である。上式から、断面積A[m2]を流れる熱量Q[W]は、
となる。この式と前項の熱コンダクタンスの定義の式から、熱伝導に関する熱コンダクタンスは、
となる。L[m]は熱が流れる方向の物体の長さである。
次に、3次元の熱伝導について考える。図3に示すように、固体の中の微小要素dxdydzなる直方体を考える。
x方向に関して、断面dydzを通して左側から入る熱量[W]は、
となり、右側から出る熱量は、
なので、直方体に蓄えられる熱量は、
となる。同様にしてy方向、z方向に関して(図には示していないが)、
となる。以上から、この直方体に蓄えられる熱量は下記となる。
今、この固体の定圧比熱をc[J/kgK]、密度をρ[kg/m3]とすると、この微小要素の温度を1℃上げるのに必要な熱量(エネルギー)はρcdxdydzとなる。「比熱」とは、その単位から分かるように、物質ごとに異なる値を有し、その物質1kgの温度を1℃上げるのに必要なエネルギーの量である。上記の微小要素に蓄えられた熱量によって、時間dtの間に、微小要素の温度がdT上昇することになるので、
となる。左辺[]内のw[W/m3]は単位時間、単位体積当たりの内部発熱量である。この右辺の熱量に関する式と前項の熱容量に関する定義式から、熱容量は、
となる。V[m3]は物体の体積である。前々式は最終的に、
となる。α≡λ/ρcは、温度伝導率(熱拡散率)である。上式が3次元の熱伝導方程式である。
図3の熱伝導方程式を解くことにより、物体内の温度分布と時間変化が求まる。温度が求まると図2の熱伝導の基本式から熱流束の大きさや熱量の方向が計算できる。すなわち、熱伝導方程式は温度(ポテンシャル)に関する式で、熱の流れ(フロー)はそれに従属した形式で求まる。
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