調査では、国内企業は生成AI活用によるリスク増加に対して、懸念を抱いている傾向もうかがえた。今後12カ月間での生成AIによるリスク増加の可能性について尋ねたところ、サイバーセキュリティ、誤情報の拡散、法的責任や風評リスク、特定のグループへのバイアスの全ての項目について、「増加する」と回答した国内企業の割合は全世界平均を上回っていた。
一方でPwC Japanの別調査では、国内企業におけるAIのリスクに対するガバナンス施策が米国企業に比べて進んでいない様子が明らかになっている。藤川氏は「AIリスクに対するガバナンス施策が進んでいないことがリスクへの漠然とした不安感につながっているのではないか。今後、生成AI活用の足かせになる可能性もあり、積極的なAI活用に伴うガバナンス施策を展開していく必要がある」と説明した。
産業別に生成AIの活用度を比較したところ、活用度が高いトップグループがテクノロジーや通信業界の企業である点は、国内企業と海外企業で共通している。ただ国内企業では、特にヘルスケア分野や自動車、重工業/産業機械/家電業界において、海外企業よりも活用度が高い傾向が見られた。大まかに言えば、医療や医薬品業界を含むヘルスケア分野と、製造業において生成AIが盛んに活用されている様子がうかがえる。
藤川氏は自動車業界での生成AI活用の実施/検討状況についても紹介した。生成AIのユースケースの中でも、「イメージに沿ったイラストのデザインや画像の生成」に用いる割合が全業界の平均値よりも高かった。続いて順に「プログラムコードの生成」や「データ収集や調査・リサーチ」なども高い。藤川氏は「製品の企画や設計段階で、市場ニーズの調査やデザイン案の作成のために生成AIを使っている例が多い。コード生成に関しては制御プログラムの作成で使っているのではないか」と分析した。
また、ヘルスケア分野で生成AIの活用度が高い理由については、「1つ目は国の政策により業界全体でDX推進に取り組む動きが活発化していることが背景にある。また、業界特有のルールからデータがサイロ化しており、社内の情報共有がうまくいっていない。非構造データを生かしやすい生成AIの強みが発揮できる環境になっているというのが2つ目の理由だ。3つ目は、グローバル企業が多いため翻訳業務などで使用しているのではないか」(藤川氏)と説明した。
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