山善は「物流CROSSING」を経て輸配送プラットフォーマーを目指す物流のスマート化(2/3 ページ)

» 2024年02月16日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

「現在の事業環境では現地で現物を持つ必要がある」

MONOist 「現在の事業環境に最適な物流網」という話がありましたが、国内の物流業界の現状をどのように認識していますか。

松田氏 当社からの製品の送り先となる販売店が在庫を持たないようになっている。かつては販売店の在庫がストックとして機能していたが、それを期待できくなっているということだ。また、生産財系の動向になるが、いわゆる多品種少量生産やマスカスタマイゼーションのトレンドに合わせて、最終顧客となる製造業が特殊な加工を行う機会が増えている。こういった特殊な加工では、機械工具も必要な分だけを都度買いすることになるので、その帰結としてに当社が在庫を持っておく必要が出てきている。

 さらに、物流2024年問題で言及されている通りトラックを用いた路線便の需要が逼迫(ひっぱく)しつつある。小口配送の翌日対応は難しくなっており、配送費用も値上がりしている。私は物流企画管掌として物流改革を担当しているが、グリーンリカバリー・ビジネス部長という役職の観点で見れば、脱炭素的な観点でも見ても路線便による小口配送は効率的だとはいえない。

 当社が在庫を持ち、さらに顧客への製品配送を即応できる体制を構築するには、やはり現地で現物を持つ必要がある。そして、山善には住建事業で構築してきたデポの拠点網があるわけで、これを活用すれば実現できるという考え方だ。

「物流CROSSING」で実現する新たな物流の枠組み 「物流CROSSING」で実現する新たな物流の枠組み[クリックで拡大] 出所:山善

MONOist 住建関連の製品を扱うデポで、生産財などに対応できるのでしょうか。

松田氏 住建関連の製品はエコキュートをはじめモノが大きい。基本的には新築やリフォームの現場向けにワンオフで都度使う場所に送るための拠点だ。このような住建関連の製品は長尺モノと呼ばれており、作業者2人が連携して配送作業に対応するツーマン配送が必要になる。ツーマン配送には製品の積み方や行先の回り方、モノの動かし方などノウハウが必要だが、そういった地場の配送業者と山善は古くから付き合いがある。ツール&エンジニアリング事業の製品は、長尺モノに近い取り回しが必要になるが、住建デポ網の配送業者に担当してもらえれば対応可能だ。

岡山の事例で大きな手応え、北陸と仙台に横展開

MONOist 第1タームの各物流拠点への展開はどのようになっていますか。

松田氏 まず、総合物流拠点として東京と大阪のロジスを新たに開設した。2023年1月に稼働を開始したロジス新東京(埼玉県北本市)と、2025年1月稼働予定の新ロジス大阪(大阪府東大阪市)は、最新のマテハン機器を導入するなどして自動化を進めている。独自開発のLMSとWMSも導入している。

ロジス新東京の外観 ロジス新東京の外観[クリックで拡大] 出所:山善
新ロジス大阪が入居する「SGリアルティ東大阪」 新ロジス大阪が入居する「SGリアルティ東大阪」[クリックで拡大] 出所:山善

 これら大型拠点の開設と並行して、デポとの物流CROSSINGに向けた取り組みも進めている。最初の事例になるのが岡山だ。LMSとWMSを導入して、2023年1月から生産財の製品を取り扱える拠点として稼働を開始しているが、配送費用の削減で大きな効果が目に見える形で出ている。また、販売店や最終顧客から「在庫を持ってくれるなら製品を買ってもいい」という話も出ており、営業部門としても大きなメリットになっている。

 岡山の事例は大きな手応えがあり、現在は北陸と仙台のデポへの横展開を進めている所だ。岡山、北陸、仙台の成果が軌道に乗ってくれば、さらに4〜5カ所のデポで取り組みをさらに広げていけるだろう。

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