EVシフトの伸び悩み期間「プラトー現象」を乗り越えるには和田憲一郎の電動化新時代!(50)(2/3 ページ)

» 2024年02月16日 06時00分 公開

プラトー現象を乗り越えるために、既に決まっていること

 EVシフトでのプラトー現象を乗り越える方策は2つに分類されると思われる。まずは、政策面で決まっていることや、企業が公表していることで、ある意味「既に予定された未来」と言うこともできる。幾つか例を挙げてみたい。

 米カリフォルニア州大気資源局(CARB)は2022年8月、2035年までに同州で販売する乗用車およびライトトラックは、全てゼロエミッション車(ZEV)にするという新たな規制「Advanced Clean Cars II」を発表した。カリフォルニア州で言うゼロエミッション車(ZEV)とは、EV、PHEVおよび燃料電池車(FCV)を指す。

 現在、米国カリフォルニア州のZEV規制では2025年にZEV比率を22%と決まっているが、今回の法規では、2026年に一気に35%まで引き上げる。いわゆる2026年の壁といわれる問題である。必要最小限でZEV規制を満足するよう調整してきた日系自動車メーカーからみれば、2026年へのハードルは高い。

 米国での2026年モデルは2025年9月ごろから新型車を発表、供給し、26MYなどと表現する。現在は2024年2月に入っており、量産開始まで1年半しかない。既にEV/PHEVの投入計画を段取りよく進めている場合はよいが、米国IRA法案との兼ね合いで、北米生産が遅れる場合などは対応が厳しくなる。果たして準備はどうだろうか。

図2:ACC II/ZEV+PHEV mandate[クリックで拡大] 出所:The California Air Resources Board

 また、北米では、2025年からテスラが開発した北米充電標準規格(NACS:North American Charging Standard)にほぼ統一され、デファクトスタンダードとなる。これまで各社バラバラだった急速充電規格が一つとなり、一気に使い勝手が良くなる。

 一方、欧州連合(EU)では、既に「Fit for 55 Package」で「内燃機関車の新規販売を2035年に禁止する」と最終合意され、未解決となっていたe-Fuel車については2024年秋までに制度設計を固める予定である。なお、欧州委員会は2024年2月6日、温室効果ガス排出量を2040年に1990年比で90%削減する目標案を提示。従来の2030年に55%削減の目標から、さらに厳しいステップアップが提示された。e-Fuel車に対してもハードルの高い制度設計が予想される。

 中国政府は2024年1月、2027年までに新エネルギー車の販売比率を45%に高める新目標を発表した。従来目標は2035年に50%だったが、2023年実績で32%まで届いていることから目標を前倒ししている。

 テスラは2025年秋に新型EVをリリース予定と公表している。これまでの車両生産の常識を破る「Unboxed Process(アンボックスドプロセス)」と呼ばれる方法だろうか。

プラトー現象からのの浮上に向けて、安全/安心のためには

 安全/安心を高めるために、この段階でもう1つ考えなければならないこともあろう。あくまで筆者の考えだが、特に日本において次の4つのアイテムが必要に思える。

(1)日本版LCAの策定

 EVの場合、走行する時は排ガスなどを出さないゼロエミッション車だが、電気を作る際にCO2を発生させる。このためWell to Wheelについて議論となることが多い。さらに、原材料の調達、バッテリーの製造、車両の組み立て、走行、廃棄までの全てのプロセスを含めるLCA(Life Cycle Assessment)となると、ガソリン車やHEV(ハイブリッド車)などに対してどのような優位性があるのか、個社では検討しているものの日本では公式見解がない。欧州では、既に欧州委員会が中心となって2020〜2050年までの乗用車カテゴリー別のLCA分析をまとめている。日本においても、産業界や学識経験者も交えた「日本版LCA」を策定する時期に来ているのではないだろうか。

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