製造業に広がるメタバース活用、設計/生産/品質管理の事例を見る(後編)デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(3)(3/5 ページ)

» 2023年11月02日 10時00分 公開

NVIDIAによる3Dデータ統合管理ミドルウェア「Omniverse」

 NVIDIAは1993年設立の、GPUに強みを持つ大手半導体企業だ。同社はメタバースやデジタルツインなどが拡がる中で、異なる3Dデータを統合管理するとともに、国外も含めたさまざまな場所で連携ができるミドルウェアの「NVIDIA Omniverse」(以下、Omniverse)を展開している。CAD/BIM、3Dシミュレーターや、後述するゲームエンジンなどの3Dデータをつなげて共通管理ができる。従来はそれぞれ個別のデジタルツインや3Dデータが存在しておりサイロ化していたが、統合的に管理/エンジニアリングができるようになる。

 Omniverseは、大手デジタルツイン企業のAutodeskやシーメンス、EPIC GAMESが展開する大手ゲームエンジンの「Unreal Engine」などと連携している。今後、自動車/建築などの設計/エンジニアリングや、工場/スマートシティ/ロボティクス/自動運転のシミュレーション、ゲームクリエイター向けへと展開する。

同時に複数人が異なるソフトウェアから3Dデータを編集

 Omniverse活用により複数人が異なる場所から、また、個別の設計ソフトウェアから同時に3Dデータを編集できる。設計プロセスでは、領域や用途ごとに個別のソフトウェアを活用するケースが多い。その結果として、1つのソフトウェア上での編集結果を別のソフトウェアへと連携させる手間がかかっていた。

 しかし、Omniverseでは各ソフトウェアでの編集結果が最終3Dデータに統合/反映され、常に最新版の3Dデータに基づき作業を行うことができる。NVIDIAとしては、Omniverseによりデジタルツイン/メタバースの市場が活性化するとコンピュータ処理量が増え、それによって本業のGPUなど半導体の収益につながると期待しているようだ。新たに組織を立ち上げ、全社をあげてOmniverse事業の強化を図っている。

図5:Omniverseでの複数人・別ソフトでの同時3Dデータ編集[クリックして拡大] 出所:NVIDIA

BMWは工場の統合型メタバースを構築

 BMWはOmniverseを活用して工場全体のデジタルツイン化の取り組みを行っている。BMWとしてさまざまな各ラインの工場3Dシミュレーターや、工作機械の3Dデータなどが個別に存在していたものを、Omniverseにより工場全体のデジタルツインとしてつなぎ合わせて、統合管理できるようにしたのだ。

 モノの流れや工場ラインの動きとともに、人の動きをリアルに再現してシミュレーション/最適化に生かしている。人間のデジタルツイン化では、作業員のセンシングデータに基づき「デジタルヒューマン」を構築して、個々人の作業効率や負荷分析などにも使っている。

図6:BMW工場における製造メタバース活用[クリックして拡大] 出所:NVIDIA

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