ハノーバーメッセと「ライトハウス」、グローバルトレンドに見る製造業の未来モノづくり現場の未来予想図(1)(3/3 ページ)

» 2023年11月13日 08時00分 公開
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取得だけが目的ではないライトハウスへの取り組み

 日本の製造業の現場では、ボトムアップ型で小さな改善が積み上げられてきたが、ライトハウスの認証取得にはトランスフォーメーションが行われているかどうかがポイントになる。従って、トップダウンで一気に戦略を詰めて無駄なものを全部切り捨ててしまうようなアクションが苦手な日本には、受け入れにくいのかもしれない。

 とはいえ、今後は日本企業もトップダウンでリーダーが率先して改革を進めることが求められている。また、ライトハウスの取得に向けて進められる取り組みは、認定取得だけを目標にしなくても、いろいろな成果を生み出すことになる。

 参考までに、サステナビリティ ライトハウスの認定を受けているシュナイダーエレクトリックのレキシントン工場における事例を紹介しよう。

レキシントン工場の[クリックで再生]出所:シュナイダーエレクトリック

 財政面や運用面に関する効果では、認定を受ける前後で電力コストに関して26%、人件費に関しては12%削減している。また、日本では稼働率と呼ばれる総合設備効率に関しては5%向上し、顧客満足度も20%向上している。そしてサステナビリティに関する効果では、CO2排出量を78%削減し、節水効果も20%向上している(図5)。

シュナイダーエレクトリック レキシントン工場の事例 シュナイダーエレクトリック レキシントン工場の事例[クリックで拡大]出所:シュナイダーエレクトリック

 さらに、トップダウンによる戦略の立案やボトムアップによるスマート工場プログラムの実行と改善、専任のプロジェクトチームとデジタル教育の推進などによって、これらが効力を発揮する枠組みについてもうまく機能させることができている。

 ライトハウスの認定の取得に必要なテクノロジーの導入に関しても、複数のテクノロジーの導入や拡張性の高いテクノロジープラットフォームが構築されている(図6)。

レキシントン工場で主に導入されている4IRのテクノロジー レキシントン工場で主に導入されている4IRのテクノロジー[クリックで拡大]出所:シュナイダーエレクトリック

 シュナイダーエレクトリックでは、こうした取り組みを詳しく知っていただくために、ライトハウスの認定を受けている世界中の工場に対して、オンライン、オフライン問わず自由に見ていただけるようにしている。ライトハウスの取り組みの趣旨と同じ考えで、われわれも自社のスマートファクトリーにおける変革のノウハウを積極的に公開し、多くの製造現場で活用いただきたいと考えている。

 次回以降、シュナイダーのスマートファクトリーへの導入ソリューションや改善アクションを例に、これからのモノづくり現場に必要な考え方や将来像を考察していく。


著者紹介:

シュナイダーエレクトリック

インダストリー事業部 バイスプレジデント

角田 裕也

1999年同志社大学卒業後、キーエンスに入社。精密測定機器セールス部門のリーダー、マネジャーを務め、2009年にシーメンス入社後はモーションコントロールソリューション、IoTソリューション部門の部門長などを歴任。その後、アクセンチュアを経て、2020年にシュナイダーエレクトリック入社、現在はインダストリアルオートメーション事業部取締役バイスプレジデントとして同部門を統括。



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