成形できる容量を少なめに割り切り、射出圧も抑えたため小型化に成功した。専用の2色成形機では2材目のシリンダーも高スペックなものが付いているが、その能力を生かしきることは少なかったという。キヤノンモールド 営業統括センター 主席の赤塚広樹氏は「われわれがこれまで2色成形を手掛けてきた中で、2材目はパッキン用途や滑り止めなどに使うため容量は少ないケースが多かった。そのため10cc以下に特化した。さらにパッキン代わりに使うエラストマーなどの樹脂はそれほど高い圧力がなくても成形できるため、最大射出圧も射出容量4.5ccの場合は80MPaにするなど通常より小さめにした」と話す。
小型射出装置では、スクリューの回転、前進、後退によって材料の挿入から成形まで行う成形機では代表的なインラインスクリュー方式ではなく、材料を溶かす可塑と射出をする部分がそれぞれ独立しているプリプランジャー方式を採用した。「取り出しロボットなどと干渉しないよう、プリプラ方式によって(インラインスクリューのように)1本で長いものではなく、短いものを2本にすることで高さを抑えた」(赤塚氏)。
汎用機で2色成形を行うための同様の射出装置自体は既に存在するが、小型でも強力な油圧で駆動するため精度が高くなく、逆に電動式では大型化して取り出しロボットと干渉するなどの難点があった。キヤノンモールドではそうした隙間に対して、機能は絞りつつも電動で小型、高精度な装置を開発したのだ。同社 代表取締役社長の斎藤憲久氏は「われわれのニーズにマッチした製品がなかったので、自ら開発して作り上げた」と語る。
開発は5年ほど前からスタートした。ドイツの「K」や米国の「NPE」など欧米のプラスチック関連の展示会を赤塚氏が視察した際に、金型が回転して複数部品が組み立てられた構成部品が出てきたことに驚いた。
よく見ると金型にサーボモータやエアシリンダなどが組み込まれており、「それまでハイサイクル、多数個取り成形で大量に作り、自動機で組み立てるのが一般的だった国内の展示会で目にすることができない技術だった。多品種少量生産への転換が模索されていた時期で、金型から組立品が出てくる『型内組み立て』という技術を国内に広めたいと強く思った」(赤塚氏)。
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