次に検査工程の自動化に取り組んだ。厳格な品質保証のため全数検査が必要なケースもあったが、これまでは作業者がそれらを目視検査していた。多い日は1日に数千点の部品を検査するため、検査が追い付かず、部品が現場に停滞している時もあった。
完成した自動化システムはホッパーから製品をベルトコンベヤーに供給し、協働ロボットが流れてきたワークを3Dカメラで認識し、エアーで吸引して回転盤に置く。すると回転盤が回転して、まず下からワークをカメラで撮影して傷やメッキむらなどを確認し、NGの場合は回転後に落下する。良品の場合は、上からカメラで検査する位置まで回転し、良品かどうかを再度検査する。これによって表と裏を検査する。こちらも2品目に対応している。
織機の糸道部品を検査する自動化システムも開発した。糸道部品は細い糸が接触しても切れない滑らかな断面が求められる。従来は作業者が爪で引っ掛かりがないことを確認していた。
今回の自動化では、協働ロボットが専用のストッカーに並んだワークを1つずつ取り出し、1度つかみ直した後、角度を変えながらカメラで20回撮影して検査し、良品か不良品かだけで仕分けずに、不具合内容、箇所ごとに用意した6種類の箱に入れていく。不良品は再検査するため、再検査時に不良箇所が分かりやすいように分類を細かくした。
ロボット導入によって作業者の負担を軽減できた他、夜間に自動で検査を行うこともできるようになり、検査能力が向上した。検査基準を人の感覚から数値化したことで、顧客からの信頼も高まった。
有川製作所では今後、2台の協働ロボットを追加導入する。プレス工程と検査工程の間にあるタップなどの2次加工を自動化し、最初から最後まで人を介さない全工程つなぎシステムを2023年内に構築する。
その他にも、自動化はさまざまな効果を同社にもたらした。「『会社の未来に期待が持てる』『モチベーションが上がる』という言葉を若手スタッフからもらうことができた。私自身、会社の社風がすごく明るくなったと肌で感じている」(有川氏)。
さらに、知見の獲得と人材の育成もできた。PLCやプログラミング、画像処理といった技能を習得できた他、システムエンジニアを2人育成することができた。有川氏は「当社にとって一番の財産」と評する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.