3年に1回開かれる世界的な加工包装展示会「interpack2023」最新動向レポートの後編です。
2023年5月4〜10日にドイツのデュッセルドルフで「interpack2023」が開催され、私の所属するB&R Industrial Automationも出展しました。幸運なことに私も日本から参加する機会に恵まれましたので、現場で感じた最新動向を2回に分けてレポートしたいと思います。今回は後編として、注目すべき革新的なシステムなどを取り上げます。
Interpack2023では、パッケージング業界を新しい時代へと押し上げるゲームチェンジャーとして、非接触型フローティングリニア搬送テクノロジーを実装したマシンが発表されました。
このテクノロジーは、磁気式浮上するシャトルを個別に6次元制御するという革新的なシステムで、2017年にカナダで大学の研究チームから起業したPlanar Motor Inc.が研究開発を進める革新的な技術です。
アダプティブマシンのコアテクノロジーであるリニア搬送テクノロジーは、マシンに飛躍的な柔軟性をもたらし、変わり続ける消費者ニーズへの適応を可能にしましたが、これまでのシステムには個別駆動するシャトルがあり、すなわちホイールなどの可動部品に摩耗や損傷リスクがあり、長期に渡る安定稼働のためには定期的なメンテナンスや交換の必要性がありました。しかし、このフローティングリニア搬送テクノロジーでは、そのような部品が一切不要になるのです。
この画期的なテクノロジーの真価は、その画期的なデザインだけでなく、産業界に与える影響の大きさにあります。このシステムは、コンベヤーラインのルートやリニア搬送のガイドレールの制約から解き放たれ、シャトルが自由に製造プロセスの目的地へ移動、さらに止まっているシャトルを追い越すこともできるのです。この特徴を生かしたマシンを米国のRA Jonesはinterpackで発表しました。
ドイツのSOMICは、CORAS(Carrier-based Orientation Rotation Arrangement System、キャリアに基づく方向転換回転配置)という画期的なシステムを発表。革新的な製品のハンドリングによって、選別、混合、集積やグルーピングに無限の選択肢を示しました。
このフローティングリニア搬送システムは、従来の製品搬送の概念に挑戦するだけでなく、アダプティブマシンが抱える可能性の限界を押し広げ、マシンオートメーションの未来を垣間見ることができました。
新型コロナウイルスの大流行とテクノロジーの革新によって、私たち消費者の行動は日々変わり続けています。その影響は、interpack2023で顕著に見受けられ、世界のパッケージング業界も変化に素早く対応している潮流を見ることができました。
さらに、日本で新型コロナウイルスの感染症分類が5類へ引き下げられた今、外食ニーズが再燃し、業務用の需要も高まる中で、生産現場では消費者向け個別パッケージングと業務用パッケージングの両方が必要とされています。多様化するニーズに対応するため、全ての分野で横断的に柔軟性が求められています。
私たち日本人にとって、「ヨーロッパ」は1つのマーケットとして捉えがちですが、そこには約24の言語とそれぞれの国民性、独特の味、食感、デザイン、嗜好性が存在します。そのため、生産者にとって多様な製品を経済的に製造するためにも柔軟性のあるマシンデザインが求められます。
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