図2では、ツェナーダイオードで生成したノイズの計測方法を示しています。VCCは乾電池7個の10.5Vの電源を用います。それを可変抵抗の一端に入力し反対側はGNDに落とします。可変抵抗の中点は抵抗(数百k〜1MΩの間の値)を介してツェナーダイオードのカソードにつなぎます。VCCの電圧はこの可変抵抗により0〜10.5Vの間で調整することができます。テスターでこの電圧を計測します。
ツェナーダイオードが生成したノイズは、ダイオードのカソードとアノード間あるいはカソードとGND間で観測できます。クリスタルイヤフォンはノイズが生成されているか否かをモニタリングするためのものです。一端はカソード、もう一端はGNDに接続します。それと同時に生成されたノイズはUSBオシロスコープで計測し、その計測データはPCに保存します。なお、USBオシロスコープがPCに計測データを保存する際にはクリスタルイヤフォンは外しておきます。
ここでUSBオシロスコープを用いた理由を少し説明しておきましょう。 生成されたノイズはクリスタルイヤフォンでも聞こえるくらいですから、音響帯域でも計測可能と考えました。そこでPCのオーディオ機能の利用を考えました。ノイズをマイク端子から入力する方法です。しかしPC(Windows 10)の機能としてALC(Auto Level Control)などさまざまな処理がなされるため、今回のように音の信号を生のままA-D(アナログ-デジタル)変換させたい用途には使いづらいようです。
USBオシロスコープとして用いた計測器は、ペン型のUSBオシロスコープ「PicoScope2104(10M 8bit 50Msps)」で、十数年前に購入したものです。購入時は確かにペン型だったのですが、プローブの先が折れてしまったので別のケースに入れ直して使っています。計測データの保存は32のフレームに分割され保存されます。保存形式はCSVを指定しました。示したリストが計測されたデータです。1列目が時間で単位はms(ミリ秒)です。2列目が入力されたノイズの値で、単位はmV(ミリボルト)です。計測データは各フレーム当たり5000ポイントです。リスト1は、保存されたCSVデータの上から十数行目までをテキストエディターで表示したものです。
時間,チャンネルA (ms),(mV) 0.00000000,-5.48112400 0.00128000,-8.55128600 0.00256000,-6.50349400 0.00384000,-6.50349400 0.00512000,-6.50349400 0.00640000,-6.50349400 0.00768000,-5.48112400 0.00896000,-2.41096200 0.01024000,-5.48112400 0.01152000,-5.48112400 0.01280000,-6.50349400 0.01408000,-6.50349400 0.01536000,-4.45875400 0.01664000,-5.48112400
ノイズ計測は2回行っており、レギュレーション電圧の高圧側と低圧側でそれぞれ1回づつデータを取得しました。計測データのCSVファイルをまとめた「noisedata.zip」は、以下のURLからダウンロードできます。
印加電圧8.929Vにおける計測データは、ダウンロードしたZIPファイル内のフォルダ「20230419-0001」に保存しています。また、レギュレーション電圧を少し上回る9.285Vの計測データはフォルダ「20230419-0002」に保存しています。それぞれのフォルダに、32個のCSVファイル、各CSVファイル内に5000ポイントの計測データが収められています。
固体物理学の世界において、トンネル効果は量子力学の現象ですが、アバランシェ降伏はそうではないそうです。もちろんトンネル効果によるノイズもアバランシェ降伏によるノイズも、クリスタルイヤフォンを通して耳で聞いただけではホワイトノイズに似たノイズに聞こえます。“真のホワイトノイズ”であるためにはそれなりの要件がありますが、本稿ではそれらの評価については行いません。
今回は、ツェナーダイオードのレギュレーション電圧の高圧側と低圧側で計測したデータを公開しましたので、評価は読者の皆さん自身で行ってみてください。今回はブレッドボードに実装した簡易的なものでしたが、外乱ノイズが混入しない配慮をもう少しすべきだったかと思っています。例えば、光や温度そして放射線などで少なからず影響はあるかもしれません。しかし、疑似乱数に比べて予測できないという意味ではそこに物理乱数の価値を見いだせるかもしれませんね。
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