イッセイ ミヤケのブランド「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」とベンチャー企業のNature Architectsがファブリック製品の全く新しい製造技術を共同開発し、ミラノの旗艦店でプロトタイプを披露した。現地取材の模様をお届けする。
テキスタイルから切り取った布にアイロンの蒸気を当てると布がジャケットの形に変形していく――。
イッセイ ミヤケのブランド「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」(以下、A-POC ABLE)が、自然界では見られない物性の材料“メタマテリアル”を扱うベンチャー企業、Nature Architectsと手を組み、ファブリック製品の全く新しい製造技術を開発。2023年4月18日に開幕した世界最大のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」に併せ、イタリア・ミラノの旗艦店であるISSEY MIYAKE / MILANの特別展示「THINKING DESIGN, MAKING DESIGN: TYPE-V Nature Architects project」において、同技術を活用したプロトタイプを披露した。
新しい製造技術は、服づくりはもちろんのこと、インテリアなどにも応用が可能だ。特別展示では、この技術で作られた衣服のプロトタイプ2点と照明、そして将来の夢として制作されたドーム状の建造物のミニチュアが展示されていた。
今回の展示品はいずれもプロトタイプであり、この製造技術に関する論文をまとめている最中とのこと。製品化に向けた技術のブラッシュアップを続ける中でのお披露目となった。
イッセイ ミヤケとNature Architects、この両社の協業によって生み出されたメンズジャケットは、人間では思い付かないような形に裁断された“たった一枚の布”で作られており、そのことにファッション関係者も驚いていた。通常、こうしたジャケット類は袖や衿、身体の正面を覆う前身頃、背中を覆う後ろ身頃など、テキスタイルから型紙を使って7〜8個のパーツを切り取り、それらを縫い合わせて作られている。
それに対し、今回展示されていたジャケットやワンピースは、イッセイ ミヤケの独自技術「A-POC(A Piece Of Cloth)」で作られたあらかじめ服の設計図(各パーツ)が糸や縫い方の違いで描かれた織物から切り抜いた“たった一枚の布”から出来上がっている。そして、その布に対してアイロンの蒸気を当て、縮むべき部分を縮ませて最終形状にし、後は形を固定するためにほんの少しだけ縫って完成させている。
この画期的な製造技術は、イッセイ ミヤケとNature Architectsがお互いの足りなかったところを補い合う形で実現したという。まずは、両社が持つ技術について紹介していこう。
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