困難だった「汎用マイコンで深層学習」を実現、Cortex-M4で画像認識も可能に人工知能ニュース(2/2 ページ)

» 2023年05月09日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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C言語ベースでの直列演算によってCPU上での推論実行に最適化

 一般的な深層学習ベースのAIアルゴリズムは、Pythonなどを使って開発し並列演算させることが前提になる。これに対してAiirDNNは、C言語ベースでの直列演算によってCPU上での推論実行に最適化することが基本アーキテクチャになる。また、ニューラルネットワークの種類によって変える必要があるランタイムエンジンを共通化している点も大きな特徴となっている。

 AiirDNNは2通りの使い方がある。1つは、外部のAIプラットフォームで構築した深層学習ベースのAIアルゴリズムのモデルデータをコンバーターの「AiirDNN Converter」によってAiirDNNのモデルデータに変換する方法だ。「再マッピングによる置き換えで、モデルデータの容量を約3分の1に圧縮できる。量子化などの方法で圧縮しないので推論精度の低下も起こらない」(出澤氏)という。もう1つは、データの学習の段階からAiirDNNを用いる方法であり、モデルデータが軽量になる点に変わりはない。また両方法とも、エイシングがAiiRシリーズの特徴とする追加学習に対応している。

「AiirDNN」の2通りの使い方 「AiirDNN」の2通りの使い方[クリックで拡大] 出所:エイシング

 AiirDNNで扱うモデルデータは、レイヤーの層数に制限はない。ハードウェアのメモリ容量に合わせて自由に設定することが可能だ。現時点で、AiirDNNで扱えるレイヤーの種類は、Dense(全結合)、SimpleRNN、Conv2Dなど7種類しかサポートしていないが、今回の発表と併せて協業パートナーから具体的なユースケースを募ることで拡充し、正式リリースにつなげたい考えだ。

「AiirDNN」はレイヤーの層数に制限はない 「AiirDNN」はレイヤーの層数に制限はない。サポートするレイヤーはDense(全結合)、SimpleRNN、Conv2Dなどの7種類[クリックで拡大] 出所:エイシング

 実際のAiirDNNの性能としては、MNISTによる28×28サイズの画像認識をCortex-M4F搭載マイコンで推論実行した場合、メモリ容量は28K〜38KB、認識率は94〜95%、演算時間は2m〜11msになったという。

「AiirDNN」の性能の例 「AiirDNN」の性能の例[クリックで拡大] 出所:エイシング

 出澤氏は「汎用マイコンだけでなく、Cortex-Aシリーズの低消費電力コアを搭載するMPUとマイコンの中間に位置する製品などでも有効活用できるだろう。民生品へのAI機能の組み込みでコストを抑えたい場合に、AiirDNNの省メモリ、低い演算コスト、OSレスという特徴が生きてくるのではないか」と述べている。

「AiirDNN」の3つの特徴 「AiirDNN」の3つの特徴[クリックで拡大] 出所:エイシング

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