ドイツのFestoは、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」において、CO2を吸収する藻類の光合成を高効率、大規模に行い、バイオ燃料などのバイオマスを精製するコンセプト装置「BionicCellFactory」を展示した。
ドイツのFestoは、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2023年4月17〜21日)において、CO2(二酸化炭素)を吸収する藻類の光合成を高効率、大規模に行い、バイオ燃料などのバイオマスを精製するコンセプト装置「BionicCellFactory」を展示した。
Festoは2022年のハノーバーメッセでも藻類の光合成を高効率、大規模に行いCO2吸収を促進するフォトバイオリアクターを展示しており、今回はその発展版となる。2022年の時点では、pHセンサーなどの各種センサーや制御技術、自動化技術によって、「藻類の吸収効率を地上植物の100倍まで高める」とする培養器の展示だったが、今回は藻類の培養を行う巨大なバイオリアクターを中心に、空気中のCO2の凝縮、分析、藻類の抽出、そして酵素を用いたバイオ燃料などの精製までの全工程を備えた、「バイオマスの自動栽培を工業化するための小さなモデル工場」として構築していた。
BionicCellFactoryは、上記5つのステップごとにモジュール化されている。モジュールはそれぞれFestoのオートメーションシステム「CPX-E」によって制御されていて、対応するコントロールパネルのダッシュボードを使用し、各ステップの個々のパラメーターを監視、変更可能。データは産業機器のデータ交換の標準規格「OPC UA」を介してモジュール間で交換され、装置全体を効率的に制御できるという。
BionicCellFactoryの中核をなすフォトバイオリアクターは、パートナーであるドイツのAlgoliner製のパイプシステムを用いている。容量は80リットル、長さは45mと巨大なパイプ内を藻類を含んだ液体が循環していて、pH値や酸素濃度、CO2濃度、温度などをセンサーで常時測定。藻類が必要とするカリウムやリン、窒素などの栄養素を添加する。さらに、Festoのマスフローコントローラーやピエゾバルブ技術によって空気の量を正確に調整し、エアレーション装置(1分間に最大20リットルの空気を供給可能)から空気を供給。その結果、微細な気泡がパイプ内を上り、藻類とCO2、O2の最適な交換を行うという。
CO2凝縮モジュールでは、CO2を結合する特殊な粒状物が入ったチャンバーに圧縮空気を吹き込みCO2を高効率に取り込んだうえで、中間貯蔵タンクに放出、こうして藻類が最もよく育つ濃度に濃縮されたCO2を、エアレーション装置によってバイオリアクターに送り込む。
分析モジュールでは、培養モジュールから藻類細胞のサンプルを常時採取し、スタートアップのQ.ANTが開発した量子ベースの粒子センサーによって、藻類のサイズや数量、異物の有無など、藻類の成長に関するデータを取得する。
同時に、デジタル顕微鏡から藻類の画像も取得し、画像から藻類の細胞を認識するようにトレーニングされたAI(人工知能)によって認識、分類、計測し、藻類の特長や量などを把握。これらの分析によってプロセス中に発生する問題にいち早く対応でき、制御が必要な場合に介入可能となるという。
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