VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集

模型を動かしながらデジタルツインやVRで都市計画を検討できる市民参加型ツールVRニュース(1/2 ページ)

インフォ・ラウンジ、サイバネットシステム、山手総合計画研究所は、3社で共同開発したXR技術を用いた体感型アーバンプランニング(都市設計)ツール「Tangible Interface XR」の報道陣向け体験会を開催した。

» 2023年04月27日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 インフォ・ラウンジ、サイバネットシステム、山手総合計画研究所の3社は2023年4月23日、共同開発した「Tangible Interface XR」の報道陣向け体験会を「BankART KAIKO」(神奈川県横浜市)で開催した。

 同体験会は、国土交通省が主導する3D都市モデル整備/オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」のユースケース開発事業の1つである「PLATEAU YOKOHAMA」において、横浜市中区で実施されたTangible Interface XRを活用した2022年度の実証実験が終了したことを受け、その成果報告の場として催されたものだ。当日は一般向けの成果報告および有識者を交えたトークセッション、体験会も実施された。

XR技術を用いた体感型アーバンプランニング(都市設計)ツール「Tangible Interface XR」 XR技術を用いた体感型アーバンプランニング(都市設計)ツール「Tangible Interface XR」。ビル模型などが配置されている中央部分が検討対象となる街並みを模した広域検討エリアで、その左右には詳細検討エリア用のテーブル(A/B)が用意されている[クリックで拡大]

模型を動かしたり置き換えたりしてデジタルツイン上の3D景観を確認

 Tangible Interface XRは、PLATEAU YOKOHAMAプロジェクトの取り組みの中で開発されたもので、建築物の評価に利用される都市模型をタンジブルユーザーインタフェース※注1化し、VR(仮想現実)と組み合わせて都市デザイン領域に適用した、XR技術を用いた体感型アーバンプランニング(都市設計)ツールだ。

※注1:タンジブルユーザーインタフェースとは、米国マサチューセッツ工科大学 教授の石井裕氏が提唱するユーザーインタフェースの形態で、形のない情報を直接触れることができる(タンジブル)ようにした、より実体感のあるインタフェースのこと。

詳細検討エリア(テーブルB)広域検討エリア詳細検討エリア(テーブルA) 「Tangible Interface XR」の専用テーブルは3つのエリアに区切られている。(左)詳細検討エリア:テーブルB/(中央)広域検討エリア/(右)詳細検討エリア:テーブルA[クリックで拡大]

 1.5m四方のTangible Interface XR専用テーブルに配置された都市模型(タンジブルオブジェクト)の形状とレイアウト情報を読み取り、それをデジタルツイン上で実寸大の3D景観として再現し、ディスプレイやVRヘッドセットに表示する。テーブル上にあるタンジブルオブジェクトを動かしたり、入れ替えたりすると、デジタルツイン上に再現された街の3D景観も瞬時に変更が反映される。

詳細検討用のタンジブルオブジェクトタンジブルオブジェクトデジタルツイン上の3D景観に反映 テーブル中央の広域検討エリアの任意の場所に詳細検討用のタンジブルオブジェクト(左)を配置することで詳細検討エリアでの検討が行える。詳細検討エリアに任意のタンジブルオブジェクト(中央)を配置すると、テーブル下部のWebカメラが底面のマーカーと配置位置を読み取り、テーブル上に置いたタンジブルオブジェクトの3Dモデルをデジタルツイン上の該当位置に表示する(右)[クリックで拡大]
テーブル下部にはプロジェクターとWebカメラが設置されている テーブル下部にはプロジェクター(赤色○印)とWebカメラ(青色○印)が設置されている。プロジェクターから出力された街区の画像を鏡で反射させてテーブル面に投影している[クリックで拡大]

 「Tangible Interface XRのソフトウェアは『Unity』で開発した。タンジブルオブジェクトの底面にあるマーカーをテーブル下部に設置したWebカメラで読み取り、その配置位置をUnity内の座標に変換することで、テーブル上に置いたタンジブルオブジェクトの3Dモデルをデジタルツイン上の街の景観の中に配置する。現在のシステムでは100個ほどのタンジブルオブジェクトを識別することが可能だ。また、街区については、テーブル下部にあるプロジェクターで出力したものを鏡で反射させてテーブル面に投影している」(説明員)

 従来の都市設計は、行政機関やデベロッパーが中心となって進められてきたが、近年、市民参加型によるプロセス設計の重要性が増している。これを受け、同プロジェクトでは、都市に関わる行政担当者、専門家、市民など、全ての関係者が主体となり、自分たちの都市の未来をともに考えてイメージを共有できるよう、3D都市モデルとXR技術を組み合わせたコミュニケーションツールを開発するに至った。

「Tangible Interface XR」報道陣向け体験会のデモの様子(撮影:MONOist編集部)
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