CADソフトの最新バージョン「AutoCAD 2024」の提供を開始したオートデスク。機能強化ポイントやAutoCADの製品戦略などについて、米Autodesk AutoCAD プロダクトマネジメント 担当ディレクターのダニア・エル・ハッサン氏に聞いた。
CADソフトウェアの最新バージョン「AutoCAD 2024」製品群(AutoCAD 2024、AutoCAD Plus 2024、AutoCAD Web、AutoCAD 2024 for Mac)の提供を開始したAutodesk(オートデスク)。最新バージョンの機能強化ポイントやAutoCADの製品戦略などについて、米Autodesk AutoCAD プロダクトマネジメント 担当ディレクターのDania El Hassan(ダニア・エル・ハッサン)氏に話を聞いた。
――設計現場を取り巻く環境、設計者が直面している課題について、CADツールベンダーとしてどのように捉えていますか?
ハッサン氏 世界的に共通する課題の1つに深刻な労働者不足が挙げられる。企業が将来にわたってビジネスを拡大し、成長していくために必要な、十分な能力を備えた人材を確保するのが困難な状況になりつつある。設計現場であればスキルの高い設計者の確保、さらにはベテラン設計者からの技術伝承といった課題も浮き彫りになっている。
もう1つは、ニューノーマル(新常態)の生活様式の中で、いかにして柔軟かつハイブリッドな働き方を実現していくかという課題だ。設計者であれば、自宅や設計現場、さらには出張先や取引先など、どのような場所でも、いつもと同じように設計作業を行いたいというニーズがある。そのために、企業はテクノロジーの力でもって、従業員が求める環境を整備、提供していかなければならない。
また、製品開発においても、より一層、プロジェクトの複雑性が増しており、設計現場はミスなく効率的に設計業務を遂行することが求められている。例えば、設計業務で日常的に発生するような反復作業をいかに正確に、素早く遂行できるかといった内容などだ。
――このような設計現場が直面する課題に対して、オートデスクあるいはAutoCADはどのような解決策を提示しているのでしょうか?
ハッサン氏 労働者不足、専門スキルを備えた人材確保の難しさに対して、AutoCADでは、業界ごとに特化してカスタマイズしたツールセットを提供することで、そうした課題の解消につなげている。具体的には、「AutoCAD Plus(AutoCAD including specialized toolsets)」が用意する7つの業種別ツールセットのことで、機械設計/電気設計/建築といった特定の業種に特化した機能やライブラリなどを提供することにより、専門性の高い設計業務をサポートしている。
さらに、ハイブリッドワークに代表される柔軟な働き方の実現に関して、オートデスクでは「AutoCAD Web」という製品ファミリーを展開している。これは、AutoCADの主要コマンドや基本的な作図機能などを、Webアプリやモバイルアプリから利用できるものだ。オートデスクはこうしたクラウドベースのツールを提供することで、多様な働き方をサポートしている。
そして、複雑性が増す製品開発における設計業務の効率化やミス低減に向けては、創業以来、オートデスクが注力してきた自動化(オートメーション)の取り組みが効果を発揮する。具体的には、機械学習(ML:Machine Learning)技術を用いた作業支援やインサイト(洞察)の提示だ。例えば、AutoCADのARRAY(配列複写)コマンドなどで機械学習が採用されている。
今回リリースした最新バージョンのAutoCAD 2024では、「マークアップ読み込み」や「マークアップ アシスト」機能などの他、必要なブロックを素早く見つけて提案してくれる「スマートブロック」に関する機能(スマートブロック置換、スマートブロック配置)にも機械学習が用いられている。オートデスクでは、設計者が次に求めている結果へと導くような支援や反復的なタスクの自動化など、設計業務のより良い成果をもたらす機能を、機械学習をはじめとするテクノロジーの力で実現している。
ハッサン氏 これらに加えて、設計力の向上やツール習得をよりパーソナライズされた形で支援するアドバイザリーエンジン「自分のインサイト」にも機械学習技術が生かされており、設計作業中に便利なコマンドを提案したり、おすすめのマクロを提示してくれたりする。
また、「AutoCAD Plus 2024」に含まれるAutoCADでは、生産性の向上に寄与する「アクティビティ インサイト」が追加されている。これは、複数の設計者によるコラボレーション作業における“情報ギャップ”を解消するための機能で、設計者は設計データに対するイベント、つまり「何が起きているか」を常に把握できるようになる。これにより、「知らない間に図面の内容が変わっていた」といったトラブルを未然に防ぐことが可能となる。
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