富士経済は製造業向けロボットの世界市場に関する調査結果を発表した。
富士経済は2023年4月5日、製造業向けロボットの世界市場に関する調査結果を発表した。2027年には市場規模が2兆円を上回ると予測した。
製造業向けロボットの市場は、中国や欧州を中心にEV(電気自動車)関連の設備投資が好調であり、車載バッテリー向けなどが伸びたことから、2022年は前年比11.5%増の1兆4179億円となった。
物流業界や三品業界(食品、医薬品、化粧品業界)は自動化ニーズが高く、今後はスカラーロボットや小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)、垂直多関節ロボット(可搬重量21kg以上)、協働ロボットなどの伸びによって市場拡大が続くとみられるとした。2027年には市場規模が2022年比53.2%増の2兆1718億円に拡大すると見込んだ。
溶接、塗装系は、主な用途である自動車業界の設備投資状況に左右されることから、2022年の市場はEV関連の設備投資増加を受けて中国や米州で拡大し、2021年比で8%増の3995億円となった。
中長期的には、EVの普及でエンジンやマフラーなど部品数が減少するため、設備投資は鈍るとみられ、市場の伸びが緩やかになると予想。2027年の市場規模は2022年比32.6%増の5298億円にとどまると見た。
アクチュエーター系は、日本市場とアジア市場の構成比が高く、アジア市場の半分を中国が占める。2022年は中国のスマートフォン製造関連の設備投資抑制や、新型コロナウイルス感染症の流行によるロックダウンなどの影響を受けながらも、車載関連や半導体製造関連、産業機器などで需要が増加し、市場規模は2021年比で5.3%増の532億円となった。
2023年以降は、車載関連や半導体製造関連、産業機器向けの部材供給が正常化に向かうことにより、電動スライダーや単軸ロボットの需要が増えるため、2027年の市場規模は2022年比88.9%増の1005億円に伸びると予測した。
組み立て、搬送系の2022年の市場はスマートフォン関連の設備投資減少の影響を受けて、スカラーロボットや小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)など、電機、電子関連、コンシュマー機器関連でニーズの高いロボットが伸び悩んだ。
一方、車載バッテリーなどEV関連製品の伸びを背景に、垂直多関節ロボットのうち可搬重量50kg以上のロボットは需要が高まった。2022年の市場規模は2021年比14%増の8340億円となった。
2023年はスマートフォン関連の需要増加は期待できないため、市場の伸びは小幅にとどまると見る。中長期的には小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)などの需要は底堅いため、市場は前年比10%以上の伸びが続くと予想、2027年には市場規模は2022年比で64.8%増の1兆3744億円に広がると見込む。
クリーン搬送系は、2022年の市場規模は2021年比10.2%増の1313億円となった。ウエハー搬送ロボットは、スマートフォン市場の縮小の影響を受けてメモリ関連を中心に設備投資が低調だったため、大幅な伸びには至らなかった。ガラス基板搬送ロボットは、ディスプレイの生産能力が需要を上回る状況が続いており、設備投資が更新需要のみにとどまっていることから、前年比横ばいとなった。
今後も、ガラス基板搬送ロボットはディスプレイ生産能力が需要を上回り、積極的な設備投資が期待できないことから、縮小するとみられる。ウエハー搬送ロボットは、2022年に過熱した半導体製造関連の需要に落ち着きがみられるものの、米国では設備投資増加が期待されるため堅調な伸びが予想されることから、クリーン搬送系の2027年の市場規模は2022年比で27.3%増の1671億円と見通す。
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