NTTコミュニケーションズは、事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」において、デジタルヒューマンやメタバースを活用する新たな取り組みを開始した。
NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は2023年3月9日、同社が推進する事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」(以下、OPEN HUB)において、デジタルヒューマンやメタバースを活用する新たな取り組みを開始したことを発表した。
同日、OPEN HUBにおいて“共創の場”として機能する「OPEN HUB Park」(大手町プレイスウエストタワー)で説明会/体験会を開催し、デジタルヒューマンやメタバースを取り入れたOPEN HUBの機能拡張の方向性について説明した。
OPEN HUBの取り組みは、NTT Comが顧客やパートナー企業とともに、社会課題の解決につながるような新しい事業コンセプトを共創し、社会実装するために2021年10月に開始した事業共創プログラムだ。各領域に精通した専門家であるカタリストやパートナー企業に所属する「人」、コンセプトやアイデアの社会実装を具現化する最先端の「技(術)」、リアルとバーチャルによる共創の「場」の3つを提供し、持続可能な社会“Smart World”の実現を目指す。
OPEN HUBの中心的活動拠点として2022年2月に開設したOPEN HUB Parkは、開設から1年間で約1300社、3000人が来訪するまでに成長し、共創をサポートするカタリストの数も開設当初の100人から400人まで拡大。さらに、カタリストが顧客やパートナー企業とともに活動する「OPEN HUB Play」では、現在約400件もの共創案件が進行しているという。
NTT ComはOPEN HUBを通じて、さまざまな業界の顧客とともに事業共創活動を推進してきたが、「OPEN HUB Parkの開設から1年が経過して最も痛感したことが、社会課題の解決に取り組もうとしているわれわれや顧客、パートナー自身も、労働人口の減少、事業やスキルの後継者不足、働き方の多様性といった課題に直面しているということだ。これら共通課題をきちんと“わがこと化”して解決していかないと、社会課題の解決などと言っていられない」と、NTT Com OPEN HUB代表の戸松正剛氏は語る。
そこで、OPEN HUBの機能を拡張し、共創の在り方を次のステージに引き上げる新たな取り組みとして展開するのが、デジタルヒューマンやメタバースの活用だ。具体的には、デジタルヒューマン技術によって生み出された「デジタルカタリスト」による来訪者対応と、メタバース空間における共創の場「OPEN HUB Virtual Park」の開設である。NTT Comはこれらの実証実験を2023年3月9日から開始する。
「これまでOPEN HUBでは、リアルとリモートで事業共創に取り組んできたが、3層目となるバーチャルを加えることで、空間や距離の制約を超えた新たな共創につなげたい。ここでのバーチャルというのは2つの意味を持つ。1つは人間のバーチャル化、もう1つは場のバーチャル化、いわゆるメタバースのことだ」(戸松氏)
人間のバーチャル化とは、アバターを用いた能力の拡張のことを指す。ただ、今回挑戦するのは、なりたい姿になれるアニメライクなアバターではなく、より人間に近いアバター、つまりデジタルヒューマンの実現だ。
NTT Comは、東映の研究組織である東映ツークン研究所のデジタルヒューマン技術により生成された“ビジュアル”と、NTT人間情報研究所のモーションや音声を生成する技術で作り出した“パーソナリティー”を掛け合わせ、デジタルカタリスト「CONN(コン)」を開発。“401人目のカタリスト”として、OPEN HUB Park内での案内など、これまでNTT Comの社員がリアル環境で行ってきた業務をCONNに任せる。これにより、オフィスとリモートを基準としたハイブリッドワークの概念を超え、デジタルヒューマンを活用した社員の新たなワークスタイル変革に取り組むとともに、顧客接点としての可能性を検証するとしている。
ちなみに、CONNの外見は実在する9人のNTT Com社員の3Dスキャンデータを組み合わせることで肖像権フリーの人間らしい見た目を実現した。音声はNTT人間情報研究所の音声合成技術「FutureVoice Crayon」を活用し、モーションについても同じくNTT人間情報研究所が研究開発している「モーション生成AI(人工知能)技術」を用い、よりリアルなデジタルヒューマンを実現しているという。
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