　オムロンは2023年3月1日、オンラインで会見を開き、新たに開発したプリント基板実装に対応する300A定格の高容量リレー「G9KA-E」を発売すると発表した。2021年7月に発売した、0.2mΩ以下の低接触抵抗を特徴とする200A定格の高容量リレー「G9KA」をベースに、端子形状や底面部分の高さを見直して放熱性能を向上することで「業界初」（同社）となる300Aの通電を実現した。価格はオープンで市場想定価格も公開していない。産業用太陽光発電システムで採用が拡大している分散型パワーコンディショナーやEV（電気自動車）用急速充電器など、高出力化が求められている用途を中心に提案を進める。発売から3年後の2026年には年間売上高3億円を目指すとしている。

　G9KA-Eは、プリント基板用交流高容量リレーの新製品で、定格で300A／1000Vに対応する。これまで最も高容量だったG9KAの定格200A／800Vを大きく上回っている。外形寸法は51.0×56.7×54.5mmで、同51.0×51.0×47.2mmのG9KAとほぼ同等の体積に抑えている。10万回の機械的耐久性、3万回の電気的耐久性、－40～85℃の使用周囲温度などもG9KAと同じ仕様を実現している。

「G9KA-E」と「G9KA」の仕様比較［クリックで拡大］出所：オムロン

　パワーコンディショナーに適用する場合、G9KAは187kVAの出力電力まで対応していたが、新製品のG9KA-Eは2倍の374kVAまで対応可能になる。さらに、海外の競合メーカーが提供する定格270A／1000Vの製品はパワーコンディショナーの出力電力が337kVAまでとなるので、これを11％上回ることになる。「顧客から定格300Aの製品が求められており、G9KA-Eはこれに対応した。産業用太陽光発電システムのパワーコンディショナーで有力な中国メーカーに向けて提案を強化していきたい」（オムロン）という。

「G9KA-E」によるパワーコンディショナーの高出力の効果［クリックで拡大］出所：オムロン

パワーコンディショナー向けに需要が高まるプリント基板用リレー

　オムロンの電子部品事業の主力製品は売上高の49％を占めるリレーだ。このうち、今回発表したプリント基板実装に対応する高容量リレーの主な用途になっているのが産業用太陽光発電システムのパワーコンディショナーの開閉器である。太陽光発電システムが発電を行ってない時や電力系統異常が起こっている時に、開閉器によって太陽電池を電量系統から隔離して安全を確保する。

産業用太陽光発電システムの構成［クリックで拡大］出所：オムロン

　数百Aという大電流を扱うパワーコンディショナーの開閉器では、電流のオンオフを担う電子部品として、電線やバスバーに直結するタイプのコンタクタやリレーが用いられてきた。しかし近年は、配線の省スペース化や、ねじ締めやコネクターの嵌合といった工程の自動化が求められており、そこでニーズが高まっているのがプリント基板への実装に対応するリレーだ。