金属Na添加でGICを簡単に高速で合成する新手法材料技術

産業技術総合研究所は、金属ナトリウム(Na)を添加することで、グラファイト層間化合物(GIC)を高速かつ簡便に大量合成できる新手法を開発した。リチウムイオン電池材料などに用いられる、GICの大量生産につながる可能性がある。

» 2023年02月16日 13時30分 公開
[MONOist]

 産業技術総合研究所は2023年1月31日、金属ナトリウム(Na)を添加することで、グラファイト層間化合物(GIC)を高速かつ簡便に大量合成できる新手法「Na触媒法」を開発したと発表した。今回の手法はリチウムイオン電池材料などに用いられるGICの大量生産につながる可能性がある。

キャプション LiC6の原料(LiとC)をNaとともに、乳鉢で約15分混合(室温)、Naの触媒作用がGIC生成を高速化[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所

 Na触媒法は、GICの原料である粉末グラファイト(C)、アルカリ金属(AM)、アルカリ土類金属(AE)に金属Naを添加することにより、室温で短時間の混合をするか、約250℃で数時間反応させるだけで、ステージ構造を制御したGICを合成できる。GICを生成する過程で、金属NaがCと反応してNaCxを形成し、これが反応中間体となってインターカレーション反応を加速する仕組みだ。

キャプション GICとステージ構造の概略図。グラフェン層間へLiなどが挿入されてGICとなる。挿入はグラフェン層n枚おきに規則正しく起こり、ステージn構造のGICを形成する[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所

 GICの合成手法としては、気相法や溶融塩法などが既に存在している。しかし従来の手法は、合成のプロセスが複雑で、合成に数日〜数週間かかった。ステージ構造の制御が容易ではなく、高価な高配向性グラファイト原料が必要になるなど、高品質な試料を大量合成するのに適していない。例えば、合成が難しいとされるAE-GIC(AEC6)を従来法で合成するには、350〜450℃という高温で6〜10日を要していた。それがNa触媒法であれば、250℃と従来法よりも低い温度で、しかも数時間で合成可能だ。加えて、安価な粉末グラファイトを原料として使え、かつ設備やプロセスも簡便にできるという利点も持つ。

キャプション (a)LiとCとNaを室温で約15分混合する間に生じる試料外観の変化。(b)混合により試料中に生じる物質とその比率の混合時間変化。(c)ペレット成型器で金属Naを試料外に押し出し、GICのペレットを作製する様子[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所
キャプション (a)Li-GICペレット。(b)K-GICペレット。(c)CaC6ペレット。(d)GIC(LiC6、LiC12、KC8、KC24、CaC6)ペレットの粉末XRDパターン、それぞれのGICについてピークに回折指数を付与[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所

 産総研は今後、GICの大量合成と応用展開の検討などを進め、GICやインターカレーション現象を利用しているリチウムイオン電池材料の電極などへのNa触媒法の適用可能性を探っていく。

⇒その他の「材料技術」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.