特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

BTOモジュールカメラで現場へのAI導入を促進、i-PROが「moducaシリーズ」を発表組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

i-PROが「moducaシリーズ」を発表。1500通りを超える豊富な組み合わせの中から顧客自身の用途に最適なカメラを選択できる「BTOモジュールカメラ」として展開する。

» 2023年01月23日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 i-PROは2023年1月20日、東京都内で会見を開き、製品や設備へカメラの組み込みに対応したモジュール型のカメラ「moducaシリーズ」を発表した。製造業をはじめ産業界のさまざまな映像活用のニーズに対応すべく、多数用意した光学モジュール、SoCモジュール、インタフェースモジュールを組み合わせることで、1500通りを超える豊富な組み合わせの中から顧客自身の用途に最適なカメラを選択できる。さらに、1台から注文を受け付けるとともに、10台未満の注文であれば3営業日以内に出荷するという短納期も実現した。BTO(Build To Order)のPCと同じコンセプトであることから「BTOモジュールカメラ」としてmoducaシリーズを展開する。同日から販売を開始しており、一般的な組み合わせであれば5万〜6万円の価格で購入できるという。

BTOモジュールカメラ「moducaシリーズ」 BTOモジュールカメラ「moducaシリーズ」[クリックで拡大] 出所:i-PRO
モジュールカメラのサンプルモジュールカメラのサンプル モジュールカメラのサンプル3種[クリックで拡大]
「moducaシリーズ」の構成要素モジュールカメラレンズトライアルキット、モジュールカメラAIスターターキット 「moducaシリーズ」の構成要素(左)。左から、光学モジュール、インタフェースモジュール、SoCモジュール。モジュールカメラレンズトライアルキット、モジュールカメラAIスターターキット(右)なども用意している[クリックで拡大]

 i-PRO 代表取締役会長 兼 CEOの中尾真人氏は「2019年にパナソニックのセキュリティカメラ部門が独立して創業した当社だが、2022年4月に社名からパナソニックを外してi-PROに変更し、同年10月には東京と福岡に自社拠点を設けるなど、名実ともにパナソニックから独立した。パナソニックから受け継いできた歴史を継承しつつさらに前に進むため、その第一歩となるのが今回発表する新製品のmoducaシリーズだ」と語る。

会見の登壇者 会見の登壇者。左から、i-PRO モジュールカメラ事業部 事業部長の塚原伸一氏、RUTILEA取締役の柴田恭佑氏、豊洋精工 福岡工場 工場長の河津克久氏、AI inside Product Marketing Unit マネージャーの佐々木章宏氏、i-PRO 代表取締役会長 兼 CEOの中尾真人氏、同社 モジュールカメラ事業部 営業・企画 マネージャーの小口隆恵氏[クリックで拡大]

AI技術者にとっての悩みの種は「最適なカメラを探すこと」

 moducaシリーズは、セキュリティカメラや医療機器向けなどのミッションクリティカルなカメラモジュールを展開してきた同社の技術を基に、映像やAI(人工知能)の活用を求めるさまざまな業界に向けて、それぞれの目的に適合した仕様を備えたカメラを、安価かつ少量発注、短納期で提供することを目的に開発された。i-PRO モジュールカメラ事業部 事業部長の塚原伸一氏は「AI技術の進化を原動力に、国内産業界におけるカメラ市場規模は、2020年の2600億円から2026年には4100億円に拡大するという調査もある。しかし、AI技術者にとって悩みの種だったのが最適なカメラを探すことだった。一定以下のコストにしようとすると大量生産品のカメラを選ぶ必要があるので、撮影したい対象や環境に仕様が合わない。一方、仕様を合わせ込むと一から設計することになり何千万円もかかってしまう」と説明する。

AI活用の映像に対する条件は多様に分散 AI活用の映像に対する条件は多様に分散[クリックで拡大] 出所:i-PRO

 そこで、「撮影したい対象・環境に合わせた仕様」「現場で即判断して購入できる価格」「いつでもすぐに手に入る、すぐに試せる」という、AI活用の現場やAI開発者の要求に応えるべく開発したのがmoducaシリーズである。

 moducaシリーズは、BTOモジュールカメラというコンセプトの下、映像を取り込む光学モジュール、取り込んだ映像を処理するSoCモジュール、処理した映像や情報を出力するインタフェースモジュールという3つのモジュールの他、金具やケースを組み合わせて、顧客自身の用途に最適なカメラを注文できる。組み合わせ総数は1500通り以上になる。また、モジュールの接続もコネクターをつなげるだけで済むようになっており、顧客自身手でモジュール交換を行うことも可能だ。

BTOを実現するモジュラー設計 BTOを実現するモジュラー設計[クリックで拡大] 出所:i-PRO

 現時点での各モジュールのラインアップは、200万画素カメラの場合、光学モジュールが10種類、SoCモジュールが7種類、インタフェースモジュールが11種類。500万画素カメラの場合、光学モジュールが25種類、SoCモジュールが7種類、インタフェースモジュールが5種類となっている。また、SoCモジュールに搭載するプロセッサはAI処理性能に優れており、ハイエンドが2TOPS、スタンダードが1TOPS。AI処理機能非搭載のものも選択できる。

組み合わせは1500通り以上 各モジュールで多数のラインアップを用意しており、組み合わせは1500通り以上[クリックで拡大] 出所:i-PRO

 塚原氏は「4000億円以上と大きく今後の成長も期待される国内産業カメラ市場から展開をスタートし、セキュリティカメラと同様に海外展開も見据えていきたい。i-PROにとっては、全くの新規事業になるが、2〜3年後には年間で200億円クラスの売上高をめざしていきたい」と意気込む。

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