RISC-Vへの移行の流れは止まらない、「2024年にはArmを超える」組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

SiFive Japanは、SiFive米国本社で共同設立者・主任設計技術者を務めるクルスト・アサノヴィッチ氏の来日会見を開いた。同氏は「業界は常に高品質のオープンスタンダードを求めており、プロセッサもRISC-Vへの移行が進めば元に戻ることはない」と強調した。

» 2022年12月27日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
SiFiveのクルスト・アサノヴィッチ氏 SiFiveのクルスト・アサノヴィッチ氏。RISC-V Internationalの議長を務めることでも知られる

 SiFive Japanは2022年12月26日、SiFive米国本社で共同設立者・主任設計技術者を務めるクルスト・アサノヴィッチ(Krste Asanovic)氏の来日に合わせて東京都内で会見を開いた。オープンソースISA(命令セットアーキテクチャ)「RISC-V」の標準化団体であるRISC-V Internationalの議長を務めることで知られるアサノヴィッチ氏は「業界は常に高品質のオープンスタンダードを求めており、プロセッサのISAもRISC-Vへの移行が進めば元に戻ることはないだろう」と強調した。

 アサノヴィッチ氏はまず、RISC-Vに基づく半導体IPプロダクトを展開するSiFiveの経営者の立場から、直近の採用事例を2つ紹介した。1つは、NASA(米国航空宇宙局)向けにマイクロチップ(Microchip Technology)が開発中のRISC-Vベース高性能プロセッサである。NASAは、これまでより自動化が求められる宇宙機器の実現に向けて従来比で100倍の性能を発揮できることや、オープンスタンダートのRISC-Vであれば10〜20年の長期利用が前提になる宇宙機器向けの開発継続が期待できることを理由に採用を決めたという。「1社の企業によって開発されるISAの場合、開発継続という意味では買収などのリスクがある」(アサノヴィッチ氏)。

マイクロチップが開発中のRISC-Vベース高性能プロセッサをNASAが採用 マイクロチップが開発中のRISC-Vベース高性能プロセッサをNASAが採用[クリックで拡大] 出所:SiFive

 もう1つは、ルネサス エレクトロニクスがRISC-Vを搭載する車載向け製品の開発でSiFiveを選んだことだ。ルネサスは、産業機器向けのRISC-V搭載製品でアンデス(Andes Technology)を採用しているが車載向けでは、自動車向け機能安全規格のISO 26262に対応した「SiFive Automotive」をそろえるSiFiveを採用する。

ルネサスがRISC-V搭載の車載向け製品開発でSiFiveをパートナーに選定 ルネサスがRISC-V搭載の車載向け製品開発でSiFiveをパートナーに選定[クリックで拡大] 出所:SiFive

 これらの他にも、サーバ向けなどで独自のAI(人工知能)/ML(機械学習)アクセラレータ技術を有するさまざまな企業向けに、これらのAI/MLアクセラレータと組み合わせる汎用コンピューティングのISAとしてRISC-Vを検討しているという。その例として、アサノヴィッチ氏はグーグル(Google)の名前を挙げた。さらに、クアルコム(Qualcomm)やサムスン電子(Samsung Electronics)が、モバイルやウェアラブル端末、コンシューマー機器などでRISC-Vを採用する方針を示していることも紹介した。

AI/MLアクセラレータの組み合わせでグーグルがRISC-Vの採用を検討クアルコムやサムスン電子も採用方針を示している AI/MLアクセラレータの組み合わせでグーグルがRISC-Vの採用を検討(左)。クアルコムやサムスン電子も採用方針を示している(右)[クリックで拡大] 出所:SiFive

 SiFiveに出資するインテル(Intel)との協業も着実に進展している。SiFiveの半導体IPプロダクトをベースに開発を行うための評価ボード「HiFive Pro P550」をインテルと共同開発しており、メインのプロセッサはインテルの最先端プロセス「Intel 4」を用いて作られた最初の製品になるという。HiFive Pro P550は、2023年内に入手可能になる予定だ。

インテルと共同開発する評価ボード「HiFive Pro P550」を発表 インテルと共同開発する評価ボード「HiFive Pro P550」を発表[クリックで拡大] 出所:SiFive
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.