アグリバイオに代表される農業は、米国の重要インフラストラクチャであるとともにバイオエコノミーを構成する主要産業の一つであるが、最近はランサムウェアなど高度なサイバー攻撃の標的になっている。例えば、米国連邦捜査局(FBI)は2022年4月20日、「20220420-001 農業協同組合のランサムウェア攻撃 - 重要な季節を潜在的に狙う」と題する通知を発出し、農業協同組合および関連業界に対して、注意喚起を行った(図3参照、関連情報、PDF)。
FBIは、食品・農業セクターのパートナーに対して、重要な植付/収穫シーズンの間、ランサムウェアの攻撃者が農業協同組合を標的に攻撃し、業務を中断させたり、金銭的損失を起こしたり、食品サプライチェーンにマイナスの影響をもたらしたりする可能性が高くなっていることを周知している。FBIの記録によると、2021年の収穫シーズン中、穀物協同組合を狙ったランサムウェア攻撃が6件発生し、2022年初めには攻撃が2件発生している。さらに、FBI、サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)、国家安全保障局(NSA)によると、米国内の16の重要インフラストラクチャセクターのうち14セクターで、ランサムウェアを含むインシデントが確認されているという。
FBIは、これらのようなランサムウェア攻撃のリスク低減策として、以下のような推奨事項を挙げている。
しかしながら、農業サプライチェーンを標的にしたサイバー攻撃被害は後を絶たない。2022年5月6日には、ニューヨーク証券取引所に上場する米国ジョージア州の農業機械メーカーAGCOが、同月5日にランサムウェア攻撃を確認し、製造設備に何らかの影響が及んだことを公表している(関連情報)。
本連載第82回で触れたように、米国証券取引委員会(SEC)は2022年3月9日、米国内に上場する公開企業を対象とする「RIN 3235-AM89: サイバーセキュリティ管理、戦略、ガバナンス、インシデント情報開示」の規則・改定提案を公表している。AGCOのような株式公開企業のサイバーインシデントに関する情報開示については、投資家からの注目度も高くなっており、全社的なリスク情報管理体制の構築が要求されている。
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