カーボンニュートラルへの挑戦

日独共に脱炭素の「切り札」は水素か、ハノーバーメッセ2022レポート【前編】ハノーバーメッセ2022(2/3 ページ)

» 2022年06月03日 10時00分 公開

ドイツは自動車情報流通基盤を製造業全体に拡大か

 ハノーバーメッセ2022の初日、今回で15回目の開催となる日独経済フォーラムが開催されました。当イベントは、会場で日独の関係者が一堂に会する場として定着しています。ただ、今回はハイブリッド開催ということもあり、日本在住の登壇者はオンラインで参加しました。

日独経済フォーラムの様子[クリックして拡大]

 フォーラムではドイツ製造業の最新トピックとして、サプライチェーン・デューデリジェンス法が紹介されました。2023年1月に施行されるこの規制は、ドイツ企業が調達品の製造工程における人権や環境について、自社製品と同等の扱いとすることを義務化するものです。順守義務に反した場合、最大80万ユーロ(約1億1090万円)の罰金が科されます。つまり、全ての製造業がサプライチェーンを以前よりも鮮明に可視化する必要に迫られることになります。

 また、ドイツは国からの働きかけとして、自動車業界全体でのデータ交換を標準化するアライアンス「Catena-X(カテナ-X)」を製造業全体に広げるという、「Manufacturing-as-a-Service in Catena-X」構想を紹介しました。具体的な内容は今後より明らかになっていくと思われますので、動向を追っていこうと考えています。

「Manufacturing-as-a-Service in Catena-X」の構想を進める[クリックして拡大] 出所:Catena-X

日本は民間企業をソフトに支援、ドイツは個別プロジェクトに介入も

 一方で日本からは、脱炭素実現のための資金調達に関する「クライメート・トランジション・ファイナンス」の基本方針を策定したことが報告されました。2050年までのカーボンニュートラル実現を目指し、素材産業を対象とした取り組みがスタートする方針です。今後は自動車業界でも、同業界のCO2排出量の内、最低でも8割をカバーする指針を策定すると見られています。加えて、規制と補助金の両面でバランスを取りながら民間企業への支援を行うこと、2023年から日本初のカーボンクレジット取引市場を稼働することも強調しました。

 ちなみに民間企業への支援という点では、ドイツも「CfDs(Contracts for Difference)計画」を発表し、鉄鋼、セメント、石灰、アンモニア市場の関連企業が低炭素化技術を採用し、脱炭素に移行するために必要な資金補助を行っています。企業の個別プロジェクトを国が審査して補助金を出す仕組みになっていることが、日本との大きな違いと言えそうです。

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