DXとは何か? その本来の意味と4つの進化形態DXによる製造業の進化(1)(2/3 ページ)

» 2022年06月06日 07時00分 公開
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DX2.0:デジタライゼーション

 第2段階は、「デジタライゼーション(Digitalization)」によるビジネスモデルの変革です。収益を得るための方法や差別的優位性の源泉などを変えることで、ビジネスとしての競争力を高めることがポイントになります。

 製造業の課題として挙げられているモノ売りからコト売りへの転換は、デジタライゼーションの代表例です。自動車メーカーが「クルマの開発/製造ではなく、移動という価値を提供するMaaS(Mobility as a Service)を核とした会社に変わる」というのは、その典型といえます。

 近年、多種多様なモノを都度利用できるようになりました。街を歩けば、自転車や傘など、時間単位で利用可能なモノが無数にあります。いずれもIoT(モノのインターネット)デバイスを付けることで、無人での貸出/返却を実現しました。まさに、デジタル化によって実現したシェアリングビジネスです。

 モノやサービスを提供することで利用者から対価を得るのではなく、広告料で成り立つビジネスもあります。テレビやラジオはその一例です。昔から存在するビジネスモデルといえますが、デジタル化されたことで、利用者の属性や履歴などに応じて広告を組み替えるだけではなく、その効果を測定できるようになりました。インターネットの広告費がテレビのそれを上回るに至ったのは、デジタライゼーションによりマス広告にはない価値を訴求できたからといってよいでしょう。

 モノやサービスの提供を通じて収集されたデータで収益を得るビジネスも拡大しています。POSデータの販売はその最古の例です。中国の芝麻(ジーマ)信用のように、行動履歴などをもとに個人の信用度を評価するシステムも普及しつつあります。種々のデータの活用はデジタライゼーションによる変革の軸となるはずです。

 ビジネスモデルの変革とは、マネタイズスキームの転換を意味します。そのビジネスを展開することで、誰から、どのような収益を得るのか、デジタル化を切り口にその可能性を広く探究することが重要です。

DX3.0:コーポレートトランスフォーメーション

 本来の意味でのDXは、「コーポレートトランスフォーメーション(Corporate Transformation)」からになります。DXを通じて「誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのか」を再考することで、企業としてのアイデンティティーを進化させることが重要です。DX戦略とは、その実現に向けたシナリオを描くことに他なりません。

 例えば、自動車メーカーが企業としてのアイデンティティーを「クルマの開発/製造」から「移動サービスの提供」に変えたとしましょう。その会社はクルマの開発/製造だけではなく、移動に関する広範な仕組みを提供するようになります。カーシェアはもちろんのこと、鉄道や飛行機なども組み合わせられるデジタルプラットフォームを構築し、移動の快適を実現することで対価を得るようになれば、ステークホルダーに対してより大きな価値を提供できるようになるはずです。

 一方で、クルマを開発/製造することの価値は全体のごく一部になります。場合によっては、その機能を外部に切り出すことが正解かもしれません。事業ポートフォリオの見直しによりコアコンピタンスの強化を図ることも、コーポレートトランスフォーメーションを進める重要な目的の1つといえます。

 同様の変化は、アパレルや食品といった他業界のメーカーのみならず、卸売り、小売り、サービスなどの事業者にも生じることが予想されます。Eコマースが小売事業者とは相反する価値を提供したように、新しいビジネスの出現が変革をリードすることも考えられます。コーポレートトランスフォーメーションが進んだ業界/領域では、ステークホルダーに対する価値提供の在り方も変化するわけです。

コーポレートトランスフォーメーションの例 コーポレートトランスフォーメーションの例[クリックで拡大]

 コーポレートトランスフォーメーションでは、誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのかを考えることが大切です。DX戦略とは、その目指す姿を実現するためのシナリオです。企業としての目指す姿をアイデンティティーとして再定義することがコーポレートトランスフォーメーションの要点といえるでしょう。

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