三菱電機が同社のAI技術「Maisart」を活用した無人搬送ロボットを開発するとともに、この無人搬送ロボットを使って観光地で購入した物品を指定の時刻と場所に届けるサービス「手ぶら観光ソリューション」の実証実験を実施すると発表。実証実験は、2022年4月19〜22日にかけて、三重県多気町の大型商業リゾート施設「VISON」で行う予定。
三菱電機は2022年4月12日、オンラインで会見を開き、同社のAI(人工知能)技術「Maisart」を活用した無人搬送ロボットを開発するとともに、この無人搬送ロボットを使って観光地で購入した物品を指定の時刻と場所に届けるサービス「手ぶら観光ソリューション」の実証実験を実施すると発表した。実証実験は、同月19〜22日にかけて、大型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」(三重県多気町)で行う予定。今回の実証実験などによってユーザーの利便性を検証し、今後2〜5年後をめどに事業化を進める。
手ぶら観光ソリューションは、観光地で観光客が買い物をした際に手荷物が増えて持ち歩きしなければならない負担をなくすことを目的としている。これによって、観光客は購入品を持たずに観光地内での飲食やイベントを自由に楽しむことが可能になり、観光地の店舗側にとっても瓶に入った飲料などの重量物やかさばる商品の買い控えによって販売機会を喪失せずに済む、観光客が店舗に預けた購入品の受け取り忘れも起こらなくなるなどのメリットがある。
開発した無人搬送ロボットは、外形寸法が幅700.7×奥行1098.7×高さ1292.6mmで、全部で6輪ある車輪のうち中央の2輪を電動モーターで駆動して走行する。最高速度は設計上は時速6kmだが、実仕様としては毎時5kmに抑えられている。カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、ソナーなどのセンサーを搭載しており、周囲をセンシングして歩行者などに衝突することなく走行することができる。車体内部には、購入した物品を収納するロッカーを7つ備えており、各ロッカーは解除コードによって扉を開閉できるようになっている。
同社は2021年7月に、今回の実証実験を行うVISON向けに自動走行型のごみ箱を開発している。無人搬送ロボットの開発では、この自動走行型ごみ箱の技術が活用されているという。
ただし、無人搬送ロボットだけでは手ぶら観光ソリューションは提供できない。無人搬送ロボットが観光客の購入品を各店舗から収集し、指定された時刻と場所に移動するための経路探索やスケジュール作成などの物流管理システムが必要になる。サーバ上で運用する物流管理システムでは、店舗スタッフがタブレット端末で登録した観光客の購入品の受け取り時刻と場所、観光客が受け取りを希望する時刻と場所などに合わせて無人搬送ロボットの移動を指示する。
無人搬送ロボットを移動させる上で重要になるのが、曜日や時間帯などによって変化する歩道の混雑度によって変わる移動所要時間である。無人搬送ロボットは歩道を走行するが、混雑度が高いときには安全確保のため周囲の歩行者とぶつからないよう頻繁に減速や停止を行う必要があり、店舗スタッフや観光客が求める時刻に遅れて到着してしまう可能性がある。
そこで、三菱電機の独自AI技術であるMaisartの一つとして、無人搬送ロボットの走行エリアである歩道の混雑度を93.3%という高精度で予測できるAIを開発した。無人搬送ロボット自身をカメラで周囲を撮影しながら走行させて、走行エリアの混雑度を「単位面積当たりの人数」として予測するモデルを作成しておく。このAIモデルは、曜日や時間帯、天候、施設のイベント情報などとも連携しているので、実際に走行する際の混雑度を高精度に予測できる。このAIで予測した混雑度から統計的に移動所要時間を決定し、指定の時刻と場所に無人搬送ロボットを移動させられる。
なお、Maisartは、機器やエッジをスマート化するコンパクトなAI技術であることを特徴としている。今回の混雑度予測のAIは、物流管理システムとともにサーバ上で運用されるため機器やエッジには組み込まれない。ただし、コンパクトであることに変わりはなく、必要があれば機器やエッジにも組み込めるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.