IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第21回は、デバッグツールベンダーとして知られるSEGGERの商用RTOS「embOS」を紹介する。
今回は久しぶりに商用リアルタイムOS(RTOS)を、ということでドイツのSEGGER(正式名称はSEGGER Microcontroller)が提供する「embOS」をご紹介したい。
SEGGERはドイツの組み込みツールベンダーである。国内だとエンビテックやPositive ONEの他、MOUSER/Digi-Key/element14/Chip One Stop/Newarkといった外資系が代理店となっている。SEGGERといえば、デバッガであるJTAGプローブの「J-Link」が一番有名ではないかと思う。国内では他にも競合が多いせいもあってかトップというわけにはいかないようだが、海外ではかなり広範に利用されている。
その昔、ルネサス エレクトロニクスが「Renesas Synergy」を発表した時に、なぜかJTAGプローブのサポートがSEGGERのJ-Linkになっており、「なぜ?」と当時のRAEA(Renesas Electronics America)のCEOに伺ったことがあるのだが、答えは「現在顧客に一番利用されているから」というものだった。そんなSEGGERだが、J-Link以外にもTraceプローブの「J-Trace」やフラッシュ書き込みツールといったハードウェアがあり、これらの他にもIDE(統合開発環境)の「Embedded Studio」や独自のランタイムライブラリ、ネットワークライブラリなどのソフトウェアをそろえておりRTOSも提供している。このRTOSこそが、今回ご紹介するembOSである。
既に30年ほどの歴史を重ねているembOSだが、実は最近種類が増えており、以下のような構成になっている。
また、embOSそのものは単にRTOSだが、オプションとして提供されているGUIとファイルシステムのコンポーネント、TCP/IP、USBホスト/デバイス、Modbusの各スタックとI/F、IoT(モノのインターネット)ツールキット、Security/Compressionモジュールなどを全てまとめて提供する「emPower OS」と呼ばれるオールインワンパッケージも提供されている。
商用ということもあり、また開発そのものはSEGGERが行っていることもあって、当然オープンソースではない。ただし、ライセンスに関しては「SFL(SEGGER's Friendly License)」という独自のものが提供されている。そもそも、パッケージはソースコードライセンスとオブジェクトコードライセンスの2種類があるのだが、オブジェクトコードライセンスに関しては非商用もしくは評価の目的であれば無償で利用できる。また、商用に関しても、ライセンスのお値段そのものはそれほど高くない。
SEGGERの場合、ロイヤルティー(売り上げや数量に応じて一定の割合で支払う料金)はなく、初期費用として支払うライセンスフィーとして、Single Products License(embOSを利用する1製品ごとのライセンス)とSingle Developer License(ある開発者が、特定の1種類のプラットフォーム上で構築する全ての製品に適用できる)の2種類がある。また、Single Products Licenseは数量ディスカウントもある。価格そのものも、embOSのSingle Products License(ソースコード)だと4980ユーロ(66万8900円)と、この手のものとしてはかなりお手軽である。
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