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» 2022年03月04日 11時00分 公開

パナソニックが新規事業を育てる組織を新設、人を理解する製品とスポーツを軸にイノベーションのレシピ

パナソニックは2022年3月3日、組織としてイノベーションを起こす仕組みとして2021年10月1日に設立したBTCイノベーション室の取り組みについて説明。イノベーションの循環を生み出すさまざまな取り組みと共に、新たにプロスポーツチームと連携した地域とくらしへの貢献を目指した「ホームタウンDX」への取り組みについて紹介した。

[三島一孝,MONOist]

 パナソニックは2022年3月3日、組織としてイノベーションを起こす仕組みとして2021年10月1日に設立したBTCイノベーション室の取り組みについて説明。イノベーションの循環を生み出すさまざまな取り組みと共に、新たにプロスポーツチームと連携した地域とくらしへの貢献を目指した「ホームタウンDX」への取り組みについて紹介した。

失敗の知見を蓄積する

 BTCイノベーション室は、グループCTO傘下の事業開発室内に設立。事業開発室はもともと、ソフトウェアやサービスソリューション系の新規事業を短期で立ち上げをしていく上での知見やノウハウを組織として蓄積し、オープンイノベーションの発想で社外も含むネットワークのハブにもなる役割を持つ。その中でBTCイノベーション室は、事業開発室のミッションを実践する組織として、新規事業のインキュベーション(企画創出から企画育成まで)と組織能力の強化と蓄積を行う。現在コア人材は11人だとしているが、パナソニック社内外からの人材が参加しているという。

photo パナソニック コーポレート戦略・技術部門 事業開発室 BTCイノベーション室 室長の中村雄志氏 出所:パナソニック

 基本的には社会課題を起点とした企画の創出と、その育成、事業化への道筋を付けるという役割を担う。各企画起点のプロダクトを事業として成り立たせるための拡張を図る「タテの先鋭化」と、事業開発の知見やノウハウそのものを蓄積する「ヨコの活動」の2軸を取り組みの中心としている。

 パナソニック コーポレート戦略・技術部門 事業開発室 BTCイノベーション室 室長の中村雄志氏は「社会に貢献する事業を作ることが役割だ。そのために成功事例を残すことよりも失敗のプロセスの蓄積と共有に力を入れていく。また事業化のひな型や人材の育成などにも取り組む」と語っている。

 多くの企業で新規事業への取り組みの中では収益性をどう捉えるかという問題を抱えているが、BTCイノベーション室では「プロジェクトごとにどのくらいの時期にどのような収益をもたらすのかを個別に管理している。例えば、IoT(モノのインターネット)機器サービスを事業化する際に、機器を無料で配布した方が課題解決につながり将来の継続的な収益につながるのであれば、積極的に配布していくべきだと考えている。個々の事業を見定めて進めていく。KPIとしては収入と支出は見ているが、インキュベーションフェーズであるので、ユーザー数や継続率などを重視している」と中村氏は語っている。

photo BTCイノベーション室の活動イメージ[クリックで拡大] 出所:パナソニック

人を理解するプロダクトで、スポーツチームと地域を結ぶ

 実質的にはさまざまな領域の部門から「相談を受けている」(中村氏)としているが、リソースには限界があるため、当面は「人を理解するプロダクト」を基軸に「プロスポーツ」を中心とした事業創出に取り組む。具体的には「CHEERPHONE(チアホン)」「ENY feedback(エニーフィードバック)」「Uttzs(ウツス)」という3つのプロジェクトを推進しているという。

 「チアホン」はスポーツチームとファンとをつなぐ音声のライブメディアプラットフォームだ。スマートフォン1台で活用が可能で音声による解説を聞きながらライブ観戦を行うなど、新たな観戦体験の創出と定着を目指している。すでにJリーグチームであるガンバ大阪を含むさまざまなスポーツチームや団体に導入しており、事業化への取り組みを進めているところだという。「エニーフィードバック」は、スポーツチーム向けの集客効果の測定ソリューションである。ID化が困難なライト層の声を収集し、ファン基盤の拡大に向けたマーケティング施策の効果検証と効果最大化を目指す。「ウツス」は、展示会のオンラインアーカイブ・コミュニケーションツールだ。バーチャル展示空間でのコミュニケーションや購買も可能なプロダクトを目指している。メタバース関連のプロジェクトとして新たな企画も検討しているという。

 これらのプロジェクトを含め、スポーツチームとの共創型事業で、地域とくらしへの貢献を目指す活動として「ホームタウンDX」を推進。スポーツチームや地域の企業様と共に、地域の課題を理解し、解決するための取り組みを進めているという。既に水戸市とJリーグチームの水戸ホーリーホックとの協力で、具体的な企画の検討を開始している。

 また、これらの取り組みの中で活用しているデザインシンキングの手法を企業や組織にワークショップを提供する取り組みも行っている。中村氏は「イノベーションエコシステムの中で共創を当たり前にしていく。クローズドイノベーションとオープンイノベーションあるけど、目指すのは、イノベーションネットワークスの世界だ。新しいものにチャレンジするのを個人だけでなく組織に広げていきたい」と語っている。

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