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» 2022年02月24日 11時30分 公開

製造現場でAIを活用するために考えるべき3つのポイントMONOist IoT Forum 2021 Digital Live(前編)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの、アイティメディアにおける産業向けメディアは2021年12月8〜9日、オンラインでセミナー「MONOist IoT Forum 2021 Digital Live」を開催した。同セミナーは通算で15回目となり、前回に引き続きオンラインでの開催となった。本稿では横河電機 横河プロダクト本部 コントロールセンター センター長の鹿子木宏明氏「製造業でのAIデータ解析・AI制御の最先端と、そのさらに先」と題した基調講演の内容を紹介する。

[長町基,MONOist]

 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの、アイティメディアにおける産業向けメディアは2021年12月8〜9日、オンラインでセミナー「MONOist IoT Forum 2021 Digital Live」を開催した。同セミナーは通算で15回目となり、前回に引き続きオンラインでの開催となった。

 本稿では基調講演に登壇した、横河電機 横河プロダクト本部 コントロールセンター センター長の鹿子木宏明氏による「製造業でのAI(人工知能)データ解析・AI制御の最先端と、そのさらに先」の内容を紹介する。

AIの価値を示す三段水槽の最適化

 基調講演に登壇した鹿子木氏は、製造業の特に工場におけるAI活用のポイントについて紹介した。工場におけるAI活用にはさまざまな課題が存在する。そのために、AI活用において期待したような成果を生むことができなかったり、成果を出し続けることが難しかったりするような場合が数多く存在する。講演では「プロジェクトの成功要因は何か」「AIが制御対象を自ら学び、最大効率を持つ未知の制御方法を見つけることは可能か」「製造業でのAIデータ解析・AI制御のさらにその先にあるAIとは」などの切り口で、製造業のAI活用にとって重要なポイントについて解説を行った。

photo 横河電機 横河プロダクト本部 コントロールセンター センター長の鹿子木宏明氏

 日本の製造現場の熟練技能者は研ぎ澄まされた技術と自分の技術に対する誇りを持つ人が多く、こうした人たちを“匠(たくみ)”と呼ぶ場合も多い。製造現場でAIを活用していくためには、こうした匠のノウハウや知見を活用していくことが求められるが、こうした匠にAIの活用が受け入れられないケースも散見される。そこで鹿子木氏は現場技能者にAIの価値を訴える際に実際の製造現場で直面するような制御を基にした例を紹介するという。

 「AIの価値としていつも紹介するのは三段水槽の自動制御の例だ。三段水槽の自動制御を行うには、PID(比例、積分、微分)制御などの従来手法でも行えるが実際に安定させるには試行錯誤が必要になる。ただAIでは最初は話にならない感じだが学習を重ねることで、結果的に早く、無駄なく、安定制御を行えるようになる。こうした事例を紹介することで納得感を醸成する」と鹿子木氏は語っている。

 現在AI活用が広がっているのは、深層学習をベースとした第3世代人工知能だとされている。その特性としては「全体俯瞰した最適化」があるとされている。「第3世代人工知能には全体俯瞰してシンプルなルールを意図的に探索するという機能であり、これがある種の知能と呼ばれている。この特性を生かして使いどころを探索していくことがポイントだ」(鹿子木氏)。

AIを使いこなすための3つのポイント

 製造現場でAIを使いこなすためには「3つのポイントが存在する」と鹿子木氏は語る。第1のポイントは「本当にAIを使うべきか(他に選択肢はないか)」ということだ。「“オッカムのかみそり”でも示されるように、シンプルな方法で解けるものに、複雑な方法を持ち込むものは得策ではない。AI以外の手法で解決できるめどが立つのであれば、その方が効率的だ。従来の手法では解けないものにAIを活用する考え方が必要だ」と鹿子木氏は考え方について述べる。

 第2のポイントは「どのAIを使えばいいか」というAIの中での手法選択をどうするかということだ。これには「ノーフリーランチ定理」という概念が指針となる。ノーフリーランチ定理は「機械学習、AIが優れた結果を出すことができるのはある特定のドメインに特化したときだけである」という数学的な証明だ。「日本の製造業では、AIを選択する際にはドメイン特化型の機械学習を活用する方向性となるだろう」と鹿子木氏は語る。

 3つ目のポイントは、AIとの付き合い方である。鹿子木氏は「『AIはIQ300の保育園児』と考え、AIで欲しい結果を得たい場合『どのように伝えるか』『その結果をどのように受け取るか』について考慮する必要がある」(鹿子木氏)。横河電機では、この対策として、社内でAIが使えそうなところで実証を行い、その中で約50件のAI解析をこなしたことによるノウハウを蓄積したという。なお、横河電機の蓄積するAI技術による解析例をみると、プラント関連では設備異常予測、製品品質予測、異常原因特定に使われているという。

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