Amazon Web Services(AWS)は、ユーザーイベント「AWS re:Invent 2021」の基調講演において、IoT関連の新たなサービスとして、現実世界のシステムを模したデジタルツインを簡単に構築できる「AWS IoT TwinMaker」と、自動車の走行データをほぼリアルタイムにクラウドに転送できる「AWS IoT FleetWise」を発表した。
Amazon Web Services(AWS)は2021年11月30日(現地時間)、ユーザーイベント「AWS re:Invent 2021」の基調講演において、IoT(モノのインターネット)関連の新たなサービスとして、現実世界のシステムを模したデジタルツインを簡単に構築できる「AWS IoT TwinMaker」と、自動車の走行データをほぼリアルタイムにクラウドに転送できる「AWS IoT FleetWise」を発表した。両サービスともβ版となるプレビューとして公開されている。
今回の基調講演には新CEOに就任したアダム・セリプスキー(Adam Selipsky)氏が登壇した。セリプスキー氏は、前回の「AWS re:Invent 2020」で産業分野向けに発表した「Amazon Monitron」などを紹介した後、その産業分野の変革をさらに進めることができるデジタルツインの可能性とその構築が困難な現状を課題として取り上げた。
AWS IoT TwinMakerはこの課題を解決するべく開発したサービスである。デバイスや設備などから得られるセンサーや画像、ビジネスアプリケーションなどのさまざまなデータをクラウドに集積し、それらの関係性をナレッジグラフとして自動でモデル化する。さらに、デジタルツインの対象となるシステムのCADやBIM、点群スキャンなどの3DモデルをAWS IoT TwinMakerにインポートすることで3Dモデルとしてのビジュアライゼーションを行い、これに先述したナレッジグラフをオーバーレイすることでデジタルツインが完成する。さらに、AWS IoT TwinMakerで構築したデジタルツインは、データ可視化サービスである「Amazon Managed Grafana」によって、Webベースアプリケーションとしてさまざまな用途で利用できるようになる。
セリプスキー氏は、AWS IoT TwinMakerの協業パートナーとして、3D CADツールやPLMソフトウェア大手のシーメンス(Siemens Digital Industries Software)の名前を挙げた。シーメンスの統合開発ポートフォリオ「Xcelerator」との組み合わせによって、デジタルツインの可能性を大きく広げられるという。
なお、AWS IoT TwinMakerのプレビュー利用が可能な地域は、現時点では米国とアジア太平洋(シンガポール)、欧州(アイルランド)となっており、現時点で日本は含まれていない。
一方、AWS IoT FleetWiseは、自動運転技術のために搭載する多数のセンサーをはじめより多くのデータが生成されるようになっている自動車のデータをクラウドに転送した後、分析や機械学習が行えるサービスだ。これらの分析結果は、自動運転機能の向上の他、デジタル顧客エンゲージメント、製品設計、エンジニアリング、製造、サプライチェーンなどさまざまな用途に役立てられる。
セリプスキー氏は「先進的な自動車1台が1時間に生成するデータは2TBにもなる。これらのデータをクラウドに収集するシステムを自動車メーカー自身で構築するコストは膨大になるが、AWS IoT FleetWiseがこの問題を解決する」と強調する。
AWS IoT FleetWiseを利用する際には、AWSのクラウド側の「AWS Management Console」でデータを収集する自動車についての定義付けと簡単なモデリングを行った後、自動車のゲートウェイECU(電子制御ユニット)にAWS IoT FleetWiseのアプリケーションをインストールする必要がある。
なお、AWS IoT FleetWiseのプレビュー利用が可能な地域は、現時点では米国東部と欧州(フランクフルト)のみとなっており、現時点で日本のリージョンは含まれていない。
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