特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

ラズパイでバルブの開閉状態をセンシングする(その2)ラズパイで製造業のお手軽IoT活用(11)(2/2 ページ)

» 2021年11月18日 10時00分 公開
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3.各研究セクションにおけるバルブの開閉検知

 ボンベ室の配管からつながる各研究セクションのバルブの開閉検知については、既設のバルブの開閉弁に磁石を設置し、その外側に磁気を検出する近接センサーを治具で固定し、近接センサーのデータからバルブの回転状態を見て開閉を検知する、磁気センサー方式を採用しました(図3)。センサーからの信号はラズパイでいったん収集し、モニタリング用のPC側に送信します。

図3 図3 バルブの開閉検知手法[クリックで拡大]

 固定用の治具は、市販品でぴったりと合うものがなかったので、オープンソースのCADツールで図面を作成し、3Dプリンタで作成しました。これにより、近接センサーをしっかりと固定できるようになり、バルブに設置した磁石の位置を正確にセンシングできるようになりました。

図4 図4 バルブへの磁石や近接センサーの設置例[クリックで拡大]

4.事務所での遠隔モニタリング

 ボンベ室の圧力測定値と、各研究セクションのバルブの開閉検知に関する情報を事務所のモニタリング用PCに収集し、画面で見れらるようにしました(図5)。これによって、ボンベ室の気体の利用状況をリアルタイムで遠隔モニタリングできるようになります。

図5 図5 モニタリング画面のサンプル[クリックで拡大]

5.まとめ

 今回のシステムは、ネットワークとして既設のネットワークとWi-Fiを使用しています。このため、各研究セクションのバルブからセンサーデータを収集するラズパイを設置するのに別途ネットワークを構築する必要がなく、手間がかからずコストも抑えることができました。

 一般的に、バルブの開閉センシングは電磁弁を使用しますが、工事の費用と時間がかかる上に安全面でのリスクもあります。今回は、外付けでセンシングする手法で安全面に配慮するとともに工事の負担を減らしました。特に治具については、オープンソースのCADツールと3Dプリンタを使用することで、小ロットの専用品を手軽に低コストで作成できます。ぜひご参考にしていただければと思います。

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筆者紹介

株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)

NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、

原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。


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