ルネサス エレクトロニクスが同社の事業展開の進捗事業を説明。足元の旺盛な半導体需要もあってIIoT(産業、インフラ、IoT)事業が好調に推移しており、2021年の通期業績は当初予想からIIoT事業の売上高と利益が上振れする見込みで、全社の営業利益率も前年の19%に対して25〜30%を見込める状況にあるという。
ルネサス エレクトロニクスは2021年9月29日、オンラインで会見を開き、同社の事業展開の進捗状況を説明した。足元の旺盛な半導体需要もあってIIoT(産業、インフラ、IoT)事業が好調に推移しており、2021年の通期業績は当初予想からIIoT事業の売上高と利益が上振れする見込みで、全社の営業利益率も前年の19%に対して25〜30%を見込める状況にあるという。また、顧客の求める半導体需要に対応するため生産能力を増強する方針も打ち出した。
受注残も2020年第4四半期から増加傾向にあり、直近の2021年第2四半期ではIIoT事業、オートモーティブ事業とも前四半期比で1.5倍にまで膨れ上がっている。同社 社長兼CEOの柴田英利氏は「今のところ、この半導体需要の“終わりの始まり”は感じていない。2022年上期まではこの勢いは続きそうだ。以前だと、オートモーティブ事業の受注残が繰り延べになることもあったが、今はOEM(自動車メーカー)と供給について見直しを進めており、その心配も少なくなっている」と語る。
デザインインの金額も目標を上回る水準で進捗している。2020年からさらに目標を積み増したIIoT事業は2021年上期の進捗が51%、2020年に大型案件があったため目標を抑えたオートモーティブ事業も同期の進捗は54%となった。柴田氏は「2021年上期のハイライトは、IIoT事業でマイコンのデザインインを前年比で約30%伸ばせたことだろう。オートモーティブ事業でも、金額規模は大きくないもののアナログの採用実績が伸びている」と説明する。
これらの受注状況と2021年8月に買収を完了したDialog Semiconductorの統合効果を踏まえて、将来的な業績見通しを上方修正した。2020年は売上高6357億円、売上総利益率は48%、営業利益率19%だったのに対して、2021年の当初予想では、売上高が増え、売上総利益率は50%、営業利益率20%以上としていた。今回の上方修正では、IIoT事業の売上高がさらに伸びて利益率も向上し、オートモーティブ事業も利益率を伸ばすことから、全社の売上総利益率は50〜55%、営業利益率は25〜30%とした。「ここで営業利益率30%という数字を出せることはうれしく思う」(柴田氏)という。
柴田氏は、2021年3月に発生した那珂工場(茨城県ひたちなか市)のN3 FABで発生した火災事故の影響からの回復についても説明した。同氏は「犠牲者が出ることなく、1カ月後には生産を再開することができた。被災状況や稼働再開の状況を含めて、対外的に透明性高く伝えられたことも良かった。このように生産を再開できたのは、ひとえに外部からの手助けがあってのことであり、また社内の連携を深めるきっかけにもなった」と強調する。
今回の火災を機に、火災対策を含めた工場のレジリエンスも強化する。まず、火災対策では、N3 FABに化学品による火災で効果を発揮するCO2消火器を配備するとともに、より高感度の煙探知機やスプリンクラーを設置した。これらの火災対応設備は、那珂工場以外の拠点にも水平展開する方針である。さらに、工場内での意識改革を進めるための専任チームも設ける。「特別なことではないかもしれないが徹底してやっていきたい。同じミスを犯さないように、工場間で改善に対する競争意識を生み出せるようなコンペも行う」(柴田氏)としている。
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