これらの新たなトレンドに伴って実店舗や従業員側には新たな課題も生まれている。その1つがコストの削減である。Eコマースで注文した商品を実店舗でピックアップするなど両者のサービスが融合していく中で、小売店舗経営者の約4分の3はEコマースにおける経費削減が今後必要になると回答している。この他、在庫管理や返品管理などを効率化する取り組みも必要になると考えられる。
こうした課題を解決する上で、小売店舗経営者と従業員は、タスクやリソース管理用ソフトウェア、スマートレジ、高度な注文処理/管理システム、店舗用IoT(モノのインターネット)プラットフォームといったテクノロジー導入に期待を寄せている。ただ、実際の課題に対する認識や、現時点での店舗へのテクノロジー導入に対する評価は両者の間で違いがある。
例えば、小売店舗経営者の88%は「店舗に人材が十分に配置されていると思う」と回答しているが、従業員では69%だった。また、「オンラインでの注文/返品の増加に対応できるように、トレーニングを十分に受けていると思う」と回答した人は小売店舗経営者では89%で、従業員では71%となった。
在庫管理に関しては、「リアルタイムでの在庫可視化が大きな課題だと思う」とした小売店舗経営者が70%だった一方で、従業員は83%となっている。また「精度と在庫を確保するには、もっと優れた在庫管理ツールが必要だと思う」とした小売店舗経営者は80%だったが、従業員は64%だった。
また、非接触テクノロジーの中でもセルフレジについて「健康と安全に関する規定の順守に役立っている」とした小売店舗経営者は86%だったが、従業員は72%だった。この他にも、「セルフレジによって従業員は優先度の高い仕事に取り組み、カスタマーサービスの質を向上させることが可能だ」とした小売店舗経営者は88%で従業員は74%、「セルフレジへの投資は有益だと思う」とした小売店舗経営者は86%で従業員は68%と違いが見られた。
古川氏はこれらの相違が生じた理由の1つとして、従業員がテクノロジー導入によって、自身の仕事が奪われる可能性を危惧しているのではないかと指摘する。「今回の調査では、『テクノロジーが安全かつ快適で便利な体験を提供する』と回答した従業員が85%となったが、このようなテクノロジーへの期待感はCOVID-19以降に生じたものであり、以前から存在していたわけではない。一方で、テクノロジーへの不安感というものは以前から一定程度存在していた。こうした事情が今回のような数値に表れたのではないか」(古川氏)。
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