新車グローバル生産、8社全てで前年増を継続するも半導体不足の影響は深刻自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

日系乗用車メーカー8社による2021年5月のグローバル生産実績は、COVID-19の感染拡大の影響で生産が停滞した前年同月と比べて8社全てが大幅な増加を示した。その一方で、世界的な半導体不足の影響は深刻で、コロナ禍前の2019年5月との比較では8社合計のグローバル生産は32%減にとどまっている。

» 2021年07月28日 06時00分 公開
[MONOist]

 日系乗用車メーカー8社が発表した2021年5月のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で生産が停滞した2020年5月に比べて8社全てが大幅な増加を見せた。ただ、世界的な半導体不足の影響は深刻で、コロナ禍前の2019年5月との比較では8社合計のグローバル生産は32%減にとどまったのが実情だ。世界各国での自動車需要自体はコロナ禍からの回復でプラス基調が続いているものの、半導体の供給不足により自動車メーカー各社は生産調整を余儀なくされている。2021年6月にはトヨタ自動車が半導体不足を原因に初めて国内工場の稼働を停止するなど、供給体制の正常化にはまだしばらく時間がかかりそうだ。

 8社合計のグローバル生産台数は前年同月比77.4%増の162万4834台と、コロナ禍で生産調整を余儀なくされた前年から大幅なプラスとなった。国内生産は同64.1%増、海外生産は同83.3%増とともに2桁%増だった。特に主要市場である北米は、前年5月に各社が大幅な生産調整を実施した反動で同4.5倍と急増した。一方、COVID-19感染拡大からいち早く回復した中国は前年5月の実績が好調だったこともあり、5社合計は同18.5%減と落ち込み、4月より状況が悪化している。

2021年5月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 201,668 469,429 158,163 129,074 671,097
64.3 93.0 321.7 ▲ 5.8 83.4
ホンダ 23,643 262,213 106,649 109,224 285,856
▲ 49.8 50.3 172.4 ▲ 13.4 29.0
日産 15,064 212,844 77,583 92,249 227,908
16.1 47.9 3542.4 ▲ 30.9 45.3
スズキ 56,367 65,951 - - 122,318
60.0 370.2 - - 148.4
ダイハツ 63,561 42,708 - - 106,269
75.3 856.5 - - 161.0
マツダ 49,660 26,495 10,373 11,667 76,155
262.6 ▲ 7.8 10273.0 ▲ 49.7 79.5
三菱 24,086 44,939 - 5,608 69,025
187.3 207.7 - ▲ 20.2 200.2
スバル 37,671 28,535 28,535 - 66,206
238.9 476.8 476.8 - 312.2
合計 471,720 1,153,114 381,303 347,822 1,624,834
64.1 83.3 354.8 ▲ 18.5 77.4
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ

 メーカー別に見ると、トヨタ自動車の5月のグローバル生産台数は、前年同月比83.4%増の67万1097台と9カ月連続で増加した。このうち海外生産は、同93.0%増の46万9429台と9カ月連続のプラスとなった。地域別では、主力市場の北米が3カ月連続のプラス。中でも「ハイランダー」などのライトトラックの販売が好調なことに加え、COVID-19感染拡大により前年に大規模減産を実施したこともあり、同4.2倍と大幅な伸びを示した。一方、アジアは前年にCOVID-19感染拡大の影響で生産を絞ったタイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアで大幅増となった。また、中国は前年5月の段階で既に市場が回復していたため、同5.8%減と2カ月連続で前年実績を下回った。ただし、中国に拠点を構える5社の中でトヨタの減少幅は最も小さかった。その結果、アジアトータルは同24.5%増と9カ月連続の増加となった。欧州も一部の国でロックダウンの影響を受けているものの、英国の大幅増により同2倍の伸びを示した。

 トヨタの国内生産は、前年同月比64.3%増の20万1668台と3カ月連続のプラスだった。国内市場向け「ハリアー」「ヤリス」といった新型車の販売好調に加えて、前年5月に全ての工場で2日間の生産停止を実施したことも増加要因となった。

ホンダ

 ホンダの5月のグローバル生産台数は、前年同月比29.0%増の28万5856台と2カ月連続のプラスとなった。海外生産は、同50.3%増の26万2213台と4カ月連続のプラス。主力市場の北米は、前年がコロナ禍で生産調整を実施したことに加えて、北米販売が5月として過去最高を記録するなど好調な伸びを示した。北米生産は同172.4%増と大幅に伸び、3カ月連続で増加した。一方、中国は前年のコロナ禍からの回復の反動や半導体不足の影響を受けたことで、同13.4%減と12カ月ぶりに前年実績を下回った。ただ、東南アジアの回復が進んだため、アジアトータルでは同1.7%増と11カ月連続でプラスとなった。

 半導体不足の影響が大きく表面化したのが国内生産で、前年同月比49.8%減の2万3643台と半減し、2カ月ぶりのマイナスとなった。8社の中で国内生産が前年割れとなったのはホンダのみ。5月は埼玉製作所で6日間、鈴鹿製作所で5日間の生産停止を余儀なくされたことが響いた。その結果、受注が好調な新型「ヴェゼル」の納期が長期化するなど、半導体不足が国内販売にも影響。輸出についても欧州向けが大きく低迷したため、同53.7%減と伸び悩んだ。

日産

 日産自動車の5月のグローバル生産は、前年同月比45.3%増の22万7908台と6カ月連続で前年実績を上回った。このうち国内生産は同16.1%増の1万5064台と4カ月連続のプラス。2020年末に発売した国内市場の戦略モデルである新型「ノート」の好調に加えて、新型「ローグ」などの輸出が同266.2%増と大きく伸長したものの、半導体不足による減産影響も発生している。

 海外生産も好調で、前年同月比47.9%増の21万2844台と6カ月連続のプラス。前年、感染拡大による活動停止で生産を絞っていた北米が同36倍と大幅に伸長し、3カ月連続で増加した。その一方で、前年には既にCOVID-19感染拡大から回復していた最大市場の中国が半導体不足の影響により、同30.9%減と2カ月連続の前年割れとなった。欧州は前年がロックダウンにより生産を停止したため前年比は不明とした。

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