3D CAD導入の理由や目的を聞いた後は、業務内容について詳しくヒアリングしています。例えば、企業や部署間でのデータのやりとりがあるか否かです。もっと言えば、2D図面の製品データを受け取ってそれを3Dモデル化しているのか、3Dの製品データを受け取ってそれを基に治具や金型を設計しているのか、その加工は社内か社外か、その情報伝達はどのように行っているのかなどです。
また、実際のデータのやりとりでは、どのようなファイル形式が使われているのかも重要です。基本的には、やりとりする相手先と同じ3D CADソフトウェアを使う方が望ましく、やりとりがスムーズに行えます。ただ、金型や治具など、製品データを受け取って設計作業を行う場合には、金型や治具設計に適した3D CADを選んだ方がよいこともあるため、筆者は相談相手の業務内容について詳しく確認するようにしています。
もちろん導入しただけでは、3D CADへの移行が完了したとはいえません。きちんと使いこなし、業務に活用していく必要があります。そのためには、人材育成や社内全体で最適化を目指した取り組みを推進しなければなりません。特に後者については、3D CADで作成した3Dデータを社内でどのように活用していくのかを、導入する前の段階からしっかりと検討すべきです。
図2をご覧ください。こちらは、経済産業省 東北経済産業局(委託先:日本能率コンサルティング)が2020年度に調査した「令和2年度 東北地域におけるオープンイノベーション加速化に向けた、オープンイノベーション拠点及びデジタルエンジニア人材高度化調査に関する調査報告」から抜粋したものです。
実は、こちらの調査に筆者も検討委員会、実務者ワーキング委員として関わらせていただいたのですが、3D CADへの移行を検討する皆さんの役に立つ情報が盛り込まれています。
図2に示されているように、デジタル化(「3D CAD導入」に読み替えてください)の実現には、
の3つのステップがあります。
また、デジタル化に必要な役割として、
と呼ばれる、6つをデジタル人材の必要性を説いています。
改革テーマの設定は、主に経営者層が行うものです。次に、テーマに合ったツールの選定を行い、ツールの実装、教育、活用、利活用へと進んでいきます。この報告書には、これらを推進していくに当たり、経営者主導で行っていく方法やプロジェクトチームを組織して行う方法、既存組織での取り組み、外部の支援を受けながら進める方法などが記されています。
筆者はこうした活動を支援する立場になりますが、自社だけで未知のものに取り組むよりも、その分野の専門家の意見も聞きながら進めることをオススメします。最終的に決断するのは、自社のトップ、経営層になりますが、いろいろな意見を聞くことは失敗のリスク低減にもつながりますし、早く成功するためには外部に頼ることも大切です。
今回は、主に3D CAD導入について紹介していますが、3Dプリンタや3Dスキャナーを導入する際にも同じことがいえます。道具(ツール)の選び方については、連載記事「デジファブ技術を設計業務でどう生かす?」を参考にしてください。
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