井原氏は「現時点では50以上の技術シーズを確保して、その内、顧客発見に至ったのが23件、顧客実証を行うのが8件、事業化にたどりついたのが3件だ」と説明する。事業化した3社は因果分析ソフトウェアを開発するinguo.io、画像処理技術を用いた個体識別サービスを提供するGAZIRU、コード解析AI(人工知能)を応用してプログラムのバグを発見する支援ツールを提供するMetabobである。
例えばinguo.ioは2019年11月にNYで設立した企業で、NECが開発した因果分析技術をベースに、観測データから因果関係を自動的に抽出するソリューションを提供する。設立直後のCOVID-19の感染拡大の影響で立ち上げ直後は経営が難航したが、現在はベライゾン・コミュニケーションズへの導入実績を積むなど好調な兆しが見えているという。今後3年間で、全世界で25億円規模の販売実績を目指す。
説明会では、NEC Xが大手スタートアップアクセラレーターであるAlchemist Acceleratorとのパートナーシップ連携を行うことも併せて発表した。Alchemist Acceleratorは2013年に設立されたアーリーステージにあるB2B向けスタートアップを専門にするアクセラレーターで、同専門領域ではトップクラスの実績を持つ。
連携を通じて、NEC Xは顧客発見/顧客実証プロセスにおける協力や、Alchemist Acceleratorが持つ3万人超の起業家や投資家、メンターなどの人的ネットワークから得るメリットを見込む。すでに顧客発見プロセスで4件、顧客実証プロセスで2件の協力を得ているという。
井原氏は「3件の事業化を通じて、NEC Xの基本的な事業機能についてはその有効性が一定程度実証できたと考える。今後はAlchemist Acceleratorとの連携などを通じて、NECのプログラムをさらに強化して、今後10年間で10件以上の事業化を目指す。企業発インキュベーションモデルの新しい形に挑戦したい」と意気込みを見せた。
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