DXを進めていく中で、特に製造業にとって障壁となるのが、ITとOTの分断である。部門としてもITとOTは分かれているケースが多く、システムも別々に運用されており、さらに組織的な交流も少ない。
最近では、IT側のシステムとしては、統廃合する機運が生まれ、システム面ではクラウド上で統合するという取り組みがさまざまな企業で進められている。一方、OT側ではさまざまな生産活動を休みなく動かしているため、システムを止めることができない。そのため、リプレースも難しいため、データ収集や利活用に向けた専用の仕組みを作り、そのデータをクラウドに統合するという動きが出ている。
こうしたデータ統合の動きが進めばAI活用も進むことになる。「OTのシステムもクラウド化し、最終的には各社のシステムがクラウド上で展開され、オペレーションとして連携させられるようになる。サプライチェーンについてもクラウド上で行われるようになると推測している。こうした時代においては今後、データ統合やデータ分析といった、データ活用の仕組みをエンジニアリングできる人材をどれだけ確保できるかがビジネス成長のカギを握ることになる」と舩生氏は語っている。
同社ではDXの最終ゴールイメージに向かって、顧客、社員、パートナーをいかに結び付けていくかを目指し、オンライン上のコミュニティー形成を目指している。さらに、OTとITが統合されたワールドクラスのソリューションサービスカンパニーへと変革を推進している。
舩生氏が横河電機に入社した2018年当時は「情報システム部門の意識や守備範囲に課題があった」と指摘する。当時の情報システム部門は、ITインフラと基幹システムだけをサポートし、他の業務系システムやエンジニアリング系システムなどは管轄としていた。そこでこれらの業務システムは全て、事業部側の部門が担当していた。そのため、各拠点や各部門のITがバラバラに構築される状況が生まれており、グローバルでこれらのシステムの点検なども行われておらず、また本格的にITやデジタル技術の専門知識を持つ人材の育成もままならない状況が生まれていた。
そこで舩生氏はこうした状況の改善を推進する中で以下の4つの指針での取り組みを進めた。
「グローバルの最適化」は、DXを進める原資捻出のための経費削減取り組みとなる。また、「ITトランスフォーメーション」については、IT部門の中でも専門としていた担当が分かれている状況を改め、再編成を行った。具体的には、SoR(Systems of Record)、SoI(Systems of Insight)、SoE(Systems of Engagement)の3つに分かれていた状況を、特に人材が不足していたSoE領域について、中途採用と外国人の採用を行い、3つがバランスよく進めて行ける体制を整えた。また、グローバル化については現在IT部門で進めているが、このベースを使ってビジネス部門でのグローバル化にも取り組む。特に、各拠点でアプリケーション部隊、インフラ部隊、セキュリティ部隊、DX部隊を横串に編成して最適化を図っているという。
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