日本IBM 理事 東京基礎研究所 所長の福田剛志氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に代表されるパンデミックだけでなく、食糧問題やエネルギー問題など、人類にとって解決すべき課題は山積している。そして、これらを解決するための科学の緊急性もかつてないほどに高まっている」と強調する。
コンピュータの歴史と同期する形で活動を進めてきたIBMリサーチでは、科学が新しい「発見の加速(Accelerated Discovery)」の時代に入りつつあるとして、コンピュータ技術によってこれを実現するための研究開発を行っている。
Accelerated Material Discovery技術はその1つになる。論文などの非構造化データから関連を見いだす「ディープサーチ」、従来よりも10〜100倍高速な「AI強化シミュレーション」、そしてMolGXに活用されているAI分子生成モデル、デザインした分子の効率的な合成方法をクラウド上で従来比100倍高速に実験を行って探索する「自動実験」の4つのプロセスから構成されている。
東京基礎研究所は、Accelerated Material Discovery技術の中でAI分子生成モデルの開発をリードしている。既に、半導体製造の必須材料であるフォトレジスト内に含まれる毒性の高いPAG(光酸発生剤)について、毒性が低くかつ適切な光学特性を持つ候補物質を5時間で2000個デザインするという成果を得ている。
また、2020年11月に長瀬産業が発表した新材料探索プラットフォーム「TABRASA」にもAI分子生成モデルが用いられているという。武田氏は「AI分子生成モデルを活用することで、分子のデザインのスピードは従来の数十倍から最大1000倍に向上できる」と述べる。
なお、現在のAI分子生成モデルは有機分子全般を対象としており、低分子や中分子だけでなく、高分子などにも対応している。ただし、金属化合物などの無機分子には対応しておらず今後の課題になるもようだ。
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