宇宙空間に存在するごみ「スペースデブリ」の除去サービス開発に取り組むアストロスケールは2021年3月20日に打ち上げを予定しているスペースデブリ除去実証衛星「ELSA-d」をはじめとする同社の事業と、スペースデブリの除去によって宇宙における人類の活動を持続可能にするためのプロジェクト「#SpaceSustainability」について説明した。
宇宙空間に存在するごみ「スペースデブリ」の除去サービス開発に取り組むアストロスケールは2021年2月18日、オンラインで会見を開き、同年3月20日に打ち上げを予定しているスペースデブリ除去実証衛星「ELSA-d」をはじめとする同社の事業と、スペースデブリの除去によって宇宙における人類の活動を持続可能にするためのプロジェクト「#SpaceSustainability」について説明した。
会見に登壇したアストロスケール 創業者兼CEOの岡田光信氏は「役目を終えた衛星やロケットの上段、爆発や衝突でできた破片などのスペースデブリは日々増え続けており、このままでは宇宙を持続的に利用できないことが分かっている。アストロスケールは、このスペースデブリの問題に解決の道筋をつけ、宇宙の持続可能性を現実のものとすることをここに宣言したい」と訴える。
民間企業の参入もあり、2020年代に宇宙の混雑がさらに加速することは確定的だ。2020年時点で、無人の宇宙機は約3200機が運用されているが、2030年までに4万6000機以上の衛星が新たに打ち上げられる予定。宇宙空間で活動する人の数も、現在は国際宇宙ステーションの6人だけだが、今後は宇宙観光などが始まることで年間千人規模で宇宙に行くことになりそうだ。「だからこそ、宇宙の安全をどうやって確保するかが喫緊の課題になっている」(岡田氏)。
これらの課題を解決する「宇宙のロードサービスを作る」ために岡田氏が2013年5月に創業したのがアストロスケールだ。同氏は「高速道路にクルマが増えてきたからといってクルマの走る台数を減らすという考えにはならない。故障車がいればレッカー移動などしてくれるロードサービスが登場することでスムーズに走行できている。宇宙の高速道路である軌道でも同様のサービスが必要になると考えた」と述べる。
創業時は専門家からさまざまな課題が突き付けられたアストロスケールだが、7年8カ月が経過した現在、ついに世界初のスペースデブリ除去実証衛星のELSA-dを打ち上げられる段階まできた。「これまで誰も開けられなかった、軌道上でのロードサービスの実現に向けた扉を開くことになる」(岡田氏)。
この“誰も開けられなかった扉”は「技術」「ビジネス」「ルール作り」の3つがあったという。技術の扉は、自身の居場所を通信などで知らせることのできない非協力物体へのRPO(ランデブーと近接操作)技術である。
ビジネスの扉では、アストロスケールとして衛星運用終了時の除去を行うEOL(End-of-Life)、既存大型デブリを除去するADR(Active Debris Removal)、衛星などの観測や点検を行うISSA(In-Situ Space Situational Awareness)、寿命延長を行うLEX(Life Extension Service)という4つのサービスを用意するとともに、スペースデブリ除去サービスを継続的に行うための世界初となる保険組成によるリスクコントロールにも取り組んだ。
そして「ルール作りの扉」では、日米欧のグローバルの専任チームが国際機関や宇宙機関、業界団体などと議論を進めており「宇宙における交通整理の議論が活発になっている。スペースデブリ除去で何ができて何ができないかを分かっている当社は、そういった場でもひっぱりだこだ」(岡田氏)という。
岡田氏は「2030年は国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)のゴールの年だ。それまでに宇宙の軌道上でロードサービスを当たり前のものにしなければならない。宇宙を持続利用ができなければ地球上のSDGsも実現できない」と、アストロスケールの事業の重要性を強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.