デンソーウェーブは2021年1月28日、「AI模倣学習」についてのウェビナーを開催。その中で産業用ロボット向けの模倣学習AIを産業用ロボットに適用したシステムを製品化し、2021年3月をめどに提供を開始することを明らかにした。
デンソーウェーブは2021年1月28日、「AI模倣学習」についてのウェビナーを開催。その中で産業用ロボット向けの模倣学習AIを産業用ロボットに適用したシステムを製品化し、2021年3月をめどに提供を開始することを明らかにした。
デンソーウェーブは、2017年の「2017 国際ロボット展(iREX2017)」で、ベッコフオートメーション、エクサウィザーズと共同で今回の技術の基となる「マルチモーダルAI(※)ロボット」について発表。多指ハンドを装着した双腕型ロボットアームを、ディープラーニングで得たアルゴリズムによってリアルタイムで制御するAI(人工知能)ロボットを紹介している。同ロボットはVR(仮想現実)ティーチングなどを生かし人の動作を模倣して学習し、ロボットにとっての難作業である「サラダの盛り付け」や「タオルをたたむ」などの動作を自律的に行う様子を紹介した。
(※)マルチモーダルAI:さまざまな種類の入力情報(画像、音声、テキストなど)を利用するAI
今回製品化を発表した「AI模倣学習」は、2017年に公開した技術の一部を、産業向けロボット用の製品として落とし込んだものだ。2017年から引き続いて早稲田大学理工学術院 教授の尾形哲也氏の協力があった他、新たなパートナーとして、AIベンチャーのIntegralが参加した。AIエンジンはIntegralが開発したという。
「AI模倣学習」製品化の狙いについて、デンソーウェーブ FA・ロボット事業部 ソリューションビジネス推進部部長 澤田洋祐氏は「産業用ロボットは通常、ルールベースのプログラミングで作業を指示するが、作業負荷などの面から難しい場面も多い。そこでAIでの学習と推論により自動的に作業プログラムが出来上がる仕組みを活用したいというニーズはある。ただ、AIなどを含むITの世界とFAの世界では、文化も言葉も異なる。そこで、デンソーウェーブが仲介し、分かりやすい製品構成と価格設定で提供できるようにした」と語っている。
「AI模倣学習」の基本的な仕組みは、まずプログラミングやカメラ情報、人の手の動きを伝えるダイレクトティーチングなどによるトレーニングデータを取得する。そして、集めたトレーニングデータからAIエンジンを用いて推論モデルを生成する。そして、現在の環境や状況からAIが未来の動作を推論して動作命令を発行しロボットを動作させる。
「AI模倣学習」がターゲットとするペルソナ(典型的ユーザーの具体的な人物像)については「AIやコンピューティングについてのリテラシーはそれほど高くないが、ロボットが使用される環境や、ロボットを動かしたい動作については深い理解がある人」(澤田氏)としている。そのためシンプルな製品構成が重要になるため、学習から推論までのハードウェアとソフトウェアを1つの産業用PCに収めた形で提供できるようにした。また、トレーニングから学習、推論の一連の流れも分かりやすい操作画面で、簡単に選択するだけで行えるようにしている。
また、ユーザー側でトレーニングデータ取得・学習・推論を繰り返したのち、より良い成果が必要となった場合は、デンソーウェーブに依頼することで、AIエンジンを含むAI模倣学習ソフトウェアのカスタマイズサービスなども提供可能とする。「汎用的な使い方ではなく専門的な使い方をする場合は、カスタマイズした方が効率的な場面もある。そういう場合のサポートも行う」(澤田氏)。
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