これから自動車開発に携わる人は、電力から燃料、蓄電池まで守備範囲が広がる!?自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

みなさん、おはようございます。土曜日です。仕事初めの1週間、お疲れさまでした。寒い中、人混みが気になりながら出社された方、在宅勤務で仕事をスタートした方。どちらが多かったのでしょうか。

» 2021年01月09日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 みなさん、おはようございます。土曜日です。仕事始めの1週間、お疲れさまでした。寒い中、人混みを気にしながら出社された方、在宅勤務で仕事をスタートした方。どちらが多かったのでしょうか。

 今週は穏やかでないニュースばかりの1週間だったように思います。増加の一途をたどる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性者数。関東1都3県の緊急事態宣言発出。米国の連邦議会議事堂に乱入して抗議するドナルド・トランプ氏の支持者たち……。アリババグループの創業者であるジャック・マー氏の行方が分からなくなっているというニュースもありました。

 また、半導体不足で自動車メーカー各社が生産を減らすと2020年末から報じられていますね。5Gの普及などによる電子機器の需要の高まりと、想定以上に自動車生産が回復したことが同時に起こったことが要因であるようです。中国汽車工業協会(CAAM)の調査では、多くの半導体メーカーが車載用の供給量を減らす傾向は2021年も続くそうです。

 自動車1台に使う半導体の数がこれから増加していくことは間違いありませんが、自動車の販売や需要を考えると先を見通しにくい状況はまだまだ続きます。もちろん、自動車以外の需要も成長しています。半導体メーカーが今後の生産能力を増強するには、難しい判断を迫られそうです。

ルネサスエレクトロニクスが2020年10月に発表した半導体需要の見通し(クリックして拡大) 出典:ルネサスエレクトロニクス

 COVID-19の世界で最初の症例から1年が経過しました。自動車部品の生産や供給が難しくなり始めたのが2020年2月の初旬だそうですので、こちらも間もなく1年がたとうとしています。コロナ禍でBCP(事業継続計画、Business Continuity Plan)がどう変化しているのか、調達やサプライチェーン、在庫の考え方がどう変わったのか、気になるところです。

新年は電動化関連の記事でスタートしました

 さて、今週MONOistで公開した自動車関連の記事も振り返ります。まずは和田憲一郎氏による連載の第40回「これからEV開発責任者となる人へ、5つの提言」です。三菱自動車で電気自動車(EV)に携わった和田氏がこれまでの経験や知見を基にした提言です。EVの開発責任者だけでなく、サプライヤーのEV部品開発の責任者にも参考にしてほしいと和田氏は語っています。

 この記事の中では、業界に例がない中でEVを開発した2009〜2010年ごろと、EVがITの結集となっていく現在や将来を分けて考えるよう訴えています。高度な自動車技術が求められることは今後も変わりませんが、開発の中でのウエイトでみるとITやエネルギーの技術の比率が高まっていくと和田氏は推定します。

 EVが話題になるとき、必ずと言っていいほど「部品点数が減るから既存の自動車メーカーでなくてもクルマを作れるようになる」という説を出す人がいます。これは自動車業界のたくさんの方が否定していますね。私もクルマづくりが簡単になるとは思えません。2009〜2010年の“第1世代のEV”が達成した高い安全性や信頼性のハードルがこれから先、下がるわけではないからです。実績のある部品を買いそろえるだけでは、クルマとしての安全性や信頼性は確保されません。ただ、ITに関する部分は少し事情が違うかもしれませんね。クルマがスマートフォンやクラウドとつながるための機能の基礎は、水平展開しやすい形が整っているのではないかと感じます。

意外と面白い、グリーン成長戦略

 もう1つのおすすめ記事は、『「新車全て電動車」はどうなった? 年末に発表されたグリーン成長戦略をおさらい』です。2030年代半ばまでに販売する新車を全て“電動車”にするという目標が含まれているのが、グリーン成長戦略です。しかし、発表されたのが2020年12月25日の午後でした。これは年末年始で内容を忘れてしまった方もいるのではないかと思い、記事を掲載しました。

 記事を書くに当たってグリーン成長戦略をじっくり読んで思ったのは、これからクルマに限らずモビリティを開発する方々はフォローすべき分野がとても幅広くなるのだなというところです。それに、グリーン成長戦略で掲げられた注力分野は密接に絡み合っているので、いずれかの業界が欠けてもカーボンニュートラルは成立しないように見えました。

 例えば自動車では、生産から利用、廃棄までを通じてCO2排出をゼロにせよという目標が立てられました。生産時に使用する電力、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の充電に使用する電力の発電がどうなっていくのか。燃料電池車(FCV)が走るための水素がどのように製造されて輸送されてくるのか。そういうところまで含めて自動車が評価されていくということです。そこまで含めないと、どの電動パワートレインが本当にカーボンニュートラルに貢献するのか、正確に検証できないのではないでしょうか。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.