製造業でも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まる中、本連載では、このDXに製造業がどのように取り組めばよいか、その戦略について分かりやすく紹介してきた。最終回となる第4回は製造業がDXを進めるために必要な「視野360度戦略」について解説する。
製造業にとって「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が大きなトピックとなる中、本連載では製造業がどのように取り組むべきかという戦略について分かりやすく紹介しています。
ここまで、連載第2回の「製造業のDXでも必須となるプラットフォーム戦略、その利点とは」、第3回の「製造業DXに必要なクラウドアプリケーション活用の3つの条件」では、プラットフォーム戦略やクラウドアプリケーションについて考察してきましたが、最終回となる今回は、DX基盤を活用した現実的な適用範囲を知る上で欠かせない「視野360度戦略」について考察していきます。
DX戦略の目指すところは、デジタルデータを活用することで業務効率の向上や業務課題の解決を図ることです。実現すべき目的が明確になっていないと、時間や労力を費やしてDX戦略を推進する意味がなくなります。
従来の製造業向けERP(Enterprise Resource Planning)システムは工場内の業務管理、業務の見える化を目指すものです。しかし実際の製造活動は、工場内部だけではなく、外部とつながることで初めて完結するものです。デジタル技術をベースに再構築された基盤をさまざまな外部システムとつなげていくことが、今回のテーマ「視野360度戦略」となります。
工場を中心として考えた場合、外部とは主に「顧客」と「仕入れ先(外注先含む)」に集約できると思います。また、「顧客」に関しては「上流の商談から受注のプロセス」と「下流の納品から保守サービスのプロセス」の2系統が存在します。では順番に考察していきましょう。
一般的な製造ERPシステムでは、顧客管理、商談管理、見積もり管理といった機能は含まれていません。これらは顧客管理システムである「CRM(Customer Relationship Management)」や営業支援システム「SFA(Sales Force Automation)」の管理領域です。また、CRM、SFAの導入をしている企業でも、ERPとは別系統のシステムであり、実際の運用も営業部メンバーが中心となっているのが現実的なところでしょうか。しかしCRMやSFAとERPが連携していないとさまざまな不都合が発生するはずです。
例えば、業務観点での不都合としては、以下のようなことが想定されます。
また、システムとしての観点における不都合としては以下のような点が考えられます。
現在の国内における製造業モデルとしては「多品種小ロット」「個別受注生産」という形態が多く見られます。この場合、大量の受注オーダー処理もしくは商談情報(設計情報、見積情報、その他)の受注連携が重要ポイントとなります。しかし、CRMやSFAと、製造ERPが別系統の場合、業務処理はそう簡単にはいきません。ここで求められるのがDX戦略です。同一プラットフォームにCRM・SFAとERPが存在すれば、両システム間のデータ共有が容易に実現できます。これは現代の「製販一致モデル」と呼べるかもしれません。
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