オンライン説明会で豊田氏は業績以外にもさまざまな話題に言及した。
2020年1月の消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2020」で発表したコネクテッドシティ「Woven City(ウーブンシティ)」については2021年にも着工する予定で、「(静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本 東富士工場の跡地に建設するため)富士山の日である2月23日に着工したい」(豊田氏)と語った。最新の状況を基に、担当者と豊田氏で3週間ごとに方向性を決めるルールで進めているという。
ウーブンシティは、トヨタがモビリティカンパニーを目指す中で、自動運転を中心とした商品やサービスの実証を行うための場所だ。「単に自動運転車を作るだけではなく、インフラとセットで考えなければならない。その原単位となるのがウーブンシティだ」(豊田氏)という。
エリア内の詳細についても明かされた。地上と地下に道路を設け、地上は自動運転車専用、歩行者専用、超小型モビリティと歩行者が行き交う道という3種類の道路とする。地下は物流向けの自動運転車のみを走らせる。天候や歩行者などの影響を排除できるため、自動運転導入のハードルが下げられるとしている。
住民は、高齢者や子育て世代といった層を想定する。社会的課題に直面する層だけでなく“発明家”も一緒に暮らすことで、課題解決をタイムリーに行えるコミュニティーを目指す。成果が出ない発明家は離脱し、別の発明家が参加するルールも設けられる。
時価総額が40兆円を超えたテスラについても語った。「EV(電気自動車)の展開やソフトウェアアップデートでの収益、再生可能エネルギーによるCO2低減などテスラ学べるところは多いが、トヨタもCASE対応はこの3年間、相当進んで投資してきた。TRIやTRI-ADではソフトウェア開発も手掛けている」(豊田氏)と述べた上で、トヨタにあってテスラにないのは保有母体の大きさとリアルでの強みだと指摘した。
ビジネスを料理に例えて、豊田氏は「テスラはキッチンやシェフがそろっていないところで『ウチのレシピが将来のスタンダードになるぞ』という点で評価されている。トヨタにはキッチンもシェフもあり、リアルな料理と評価の厳しいお客さまがいる。エネルギー事情がさまざまな国や地域に対応できるメニューを持つトヨタの方が選ばれると思っている」と自信を見せた。
また、トヨタ 取締役・執行役員の寺師茂樹氏は「2050年にはモビリティはゼロエミッションであるべきだという流れになっている。そのためには幅広い技術が必要だが、水素や再生可能エネルギーなど手段はさまざまだ。規制がどのように進むとしても、クルマを選ぶのはお客さまだ。お客さまに選ばれるクルマ、誰でも選択できるクルマを提供することと、カーボンニュートラルの両方を進めていくことが重要だ」と述べた。
FCV(燃料電池車)の「ミライ」が、まもなくフルモデルチェンジとなる。新型車の提案について、豊田氏は「これまではどんな新しい装備があるかという説明が多かったが、これからはクルマとストーリーを一緒に理解してもらいたい。どういう世界観やストーリーをクルマから得られて、乗る人がどんな主人公になれるかを伝えたい」と方針を示唆した。
また、FCVの普及については「クルマだけ出せば増えていくわけではない。インフラが先かクルマが先かというのではなく、花とミツバチのように一体となって、電動化の大きな波のきっかけにしていきたい」(豊田氏)と述べた。
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