アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中のオンデマンドセッションの1つとして、ハードウェアスタートアップであるmui Labの共同創業者でSoftware Architectの 久保田拓也氏が「ハードウェアスタートアップが AWS を活用して短期間で IoT プロダクトをローンチするまで」をテーマに講演を行い、AWSを使った製品開発の苦労やポイントなどについて語った。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中のオンデマンドセッションの1つとして、ハードウェアスタートアップであるmui Labの共同創業者でSoftware Architectの久保田拓也氏が「ハードウェアスタートアップがAWSを活用して短期間でIoTプロダクトをローンチするまで」をテーマに講演を行い、AWSを使った製品開発の苦労やポイントなどについて語った。
mui Labは2017年10月設立のベンチャー企業である。「情報テクノロジーと人の佇まいが無為自然に調和した世界を実現する」をビジョンとして掲げている。このビジョンの下、自然素材のIoTデバイスの開発に取り組み、2020年2月には木製のスマートデバイス「mui」を発売した。
「mui」は木製のバー状の情報端末で、使用しないときは家庭内のインテリアのような外観だが、触れたりメッセージを受信したりすると、情報を表示し家庭内のコミュニケーションハブとして機能する。テキストメッセージや手書きの文字なども送ることができる。久保田氏は「現在は初期ユーザーの声から機能更新などを進めているところだ」という。
同社ではこの「mui」の本格開発開始を2019年12月から開始。2020年1月末には完成させ初回ローンチを行ったという。久保田氏は「試作や構想はそれまでにも行ってきたが、実際に開発に本格的に着手してからは2カ月足らずで開発できた」と述べている。これらを実現できた大きな理由は、機能のほとんどをAWSのマネージドサービスを組み合わせて構築したことにある。
「mui」のシステム構成は情報を集約する「mui Server」をクラウド上に構築し、このサーバと、「mui」のボードが、API(Application Programming Interface)を経由して情報のやりとりを行う。また、スマートフォン上のモバイルアプリともAPI経由で情報をやりとりする構成となっている。通信はHTTとMQTTに対応。「mui Server」はクラウド経由で他のサービスとも連携可能で、これによりサービスを拡張することを想定している。
これらにAWSの各種サービスを当てはめると以下のようになる。通知サービスを除いてほぼ全てAWSのマネージドサービスを活用したという。「ほぼ全面的にAWSを採用したことで、大幅に開発期間を短縮できた」と久保田氏は述べている。
デバイスとの通信や接続状態の監視、プロビジョニングには「AWS IoT Core」を採用している。「全てマネージドサービスで実装し、デバイス生産時に1台ずつ登録している」(久保田氏)。これにより各製品の稼働情報などを把握し、機能の向上などに活用しているという。
ただ、開発の中でもさまざまな苦労はあったという。モバイルアプリの開発には「AWS Amplify」を活用した。「AWS Amplify」は簡単にアプリの開発環境を構築できることが特徴だが「最初から構築する場合はよいが、既に構築していた別の環境との接続を行おうとするとうまくいかず大変だった」と久保田氏は苦労を語る。また、ユーザーの登録や管理は「Amazon Cognito」を採用したが「認証ができなかったり、日本語入力が行えなかったりする問題があった」(久保田氏)。
今後は「Android対応がまだなのでアプリの実装を行う。また、構築したサービスの強化はもちろんだが、他のサービスの構築と連携を進めることで、総合的な価値を高めることに取り組みたい」と久保田氏は語る。さらに、「AWS IoT Coreを活用してAlexaと簡単に連携できるので、これを生かした機能追加なども検討する」(久保田氏)としている。
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