2020年に取り組むべきAI関連の優先課題における上位3項目を尋ねたところ、日本では「試験段階から実用段階への移行」が11%でトップとなり、続いて「他テクノロジーとの融合管理」が10%、「ビジネスケースの作成」や「予算承認獲得」など計5項目が8%で同率となった。一方で、米国では「ROI(投資対効果)測定」が24%、「ビジネスケースの作成」が20%、「予算承認獲得」が18%だった。
ボンデュエル氏は「米国ではROIの測定などを通じて、AIが経営にもたらすインパクトを見極めようとしている姿勢が伺える。一方で、日本はPoC(概念実証)から運用環境に移行を試みている企業もあれば、財務規律に取り組む企業もあり、回答がいくつかの項目に集中するのではなく、分散する傾向にあった。このことから日本では、全体的にAI活用のための実証を重ねている段階にあると推察される。このこと自体を否定的に捉える必要はないが、いずれはAIの活用が本当にビジネスに利益をもたらし得るかをしっかりと考えなければならない」と語った。
またAIに関する優先課題の中でも、特にデータ活用において課題があるかと尋ねたところ、日本では「データの標準化、統合、ラべリング」と「IoTなどから得たデータを統合し活用」が28%で、続いて「データの特定、収集、集計」が27%で上位3項目を占めた、これに対して米国では「データからビジネスインサイトを獲得する」が「データの特定、収集、集計」が45%で「IoTなどから得たデータを統合する」が43%となった。
これについてボンデュエル氏は「日米の回答者が挙げた上位3項目は、全てAIを活用する前の準備段階、データ整備に関連する課題だった。しかし、回答結果をよく見ると、米国では『GDPR(EU一般データ保護規則)など規制要件への適合』や『一貫したライフサイクルアプローチ』など、AI導入後の運用課題も優先課題として多く挙げている。日本の場合はAIを使ってビジネスインサイトを獲得する段階に到達している企業は少ないのかもしれない」
また、経営幹部による投資などの取り組み方でAIアプリケーションの開発/活用を効果的に推進できそうかと尋ねると、日本では「強くそう思う」と「そう思う」が43%で「そう思わない」と「全くそう思わない」が55%という結果になった。一方で、米国では「強くそう思う」と「そう思う」が80%、「そう思わない」と「全くそう思わない」が18%という結果になった。
調査結果を踏まえて、PwCコンサルティング パートナーで、PwC Japanグループにおいてはデータ&アナリティクスリーダー AI Labリーダーを務める中山裕之氏は「COVID-19によって顧客や従業員などの関係性における価値観などに新たなメガトレンドが生じると予測している。こうした変化にAIで対応していく上では『AI活用の目標の明確化』『AI活用の目標達成に向けえた各種基盤の構築』『AI活用の加速化と利用範囲の拡大』の3本柱が重要になる」と総括した。
また企業のAI活用を推進するためのPwCグループによる取り組みについて「当社では企業によるAI活用を包括的に支援する拠点として『AI Lab』を運営している。国内外1400社以上の企業によるAIの導入事例をデータベース上で参照できる他、AIの実装支援、実装後のリスクマネジメントなどを総合的に支援する。こうしたAI支援サービス/ソリューションもぜひ活用してほしい」と紹介した。
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