「OPC UA for Robotics Part2」の方向性とロボットの今後いまさら聞けない「OPC UA for Robotics」(3)(1/2 ページ)

産業機器のインタフェース共通化を目指すOPC UAのコンパニオン仕様の1つに、産業用ロボットを対象とする「OPC UA for Robotics」がある。本連載では「OPC UA for Roboticsとは何か、何ができるのか」について、想定される活用シーンとともに紹介している。第3回の今回は「OPC UA for Robotics」の現在の状況と今後の展開について紹介する。

» 2020年08月19日 11時00分 公開

 産業機器のインタフェース共通化を目指すOPC UAのコンパニオン仕様の1つに、産業用ロボットを対象とする「OPC UA for Robotics」がある。本連載では「OPC UA for Roboticsとは何か、何ができるのか」について、想定される活用シーンとともに紹介している。

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 本連載の第1回「産業用ロボットの共通インタフェース『OPC UA for Robotics』が目指す世界」では、「OPC UA for Robotics」の目的やリリース済みの「OPC UA for Robotics Part1(以下、Part1)」の概要をご紹介した。第2回の「『OPC UA for Robotics』の現在地と将来への展望」では、工場内ネットワークや、産業⽤ロボットが持つ機能を切り⼝に、Part1が対象とする領域や今後の展望について説明した。第3回の今回は、検討が進む「OPC UA for Robotics Part2(以下、Part2)」の方向性について、最新情報を交えてご紹介する。

OPC UA for Robotics Part2の方向性

 「OPC UA for Robotics」はOPC UAのコンパニオン仕様の1つであり、2019年7月に"OPC 40010-1, OPC UA Companion Specification for Robotics, Part 1: Vertical Integration"がリリース済みである。現在はPart 2が審議段階にあるが、いまだ詳細は公開されていない。

 その中で、同仕様策定を主導しているドイツ機械工業連盟(VDMA)のAndreas Faath(アンドレアス・ファース)氏が2020年6月18日にオンライン開催された「ベッコフウェブテクニカルセミナー 2020 -夏-」(※1)のパネルディスカッションに登壇し、Part2の内容について言及した。それに基づき、Part2の方向性を考えてみたい。

(※1)ベッコフオートメーション主催のWebセミナーにおいて「欧州で進むオープン化戦略の最新動向と生産財標準化がもたらすものづくりの未来」と題したパネルディスカッションが開催され、VDMAのファース氏が登壇した

 Part1では産業用ロボットの基本的な情報モデル(※2)が定義され、ITネットワークからロボットの状態を読み取る用途のみが想定されていた。Part2では、産業用ロボットを能動的に制御する方向に足を踏み出すことになる。そのため、ロボットの状態遷移(ステートマシン)や、ロボットの位置情報の記述に関する定義が新たに追加される。

(※2)正確には「産業用ロボットを含むモーションデバイスおよびモーションデバイスシステムの情報モデル」である

 これにより、同インタフェースを介したリモート制御により、以下のような処理が可能になるという。

  • プログラムのアップ/ダウンロードや一覧表示
  • サブルーチンへのジャンプ開始
  • タスク制御の開始/停止
  • システムメッセージの確認
  • ドライブ制御の入り切り

 これらの実現形態については言及がなかったが、処理の性質上、OPC UAのオブジェクト(ここでは、モーションデバイスやモーションデバイスシステム)が持つメソッドとして実装されるものと考えられる(※3)

(※3)OPC UAのオブジェクトモデルはその配下にメソッド(method、呼び出し可能な機能/関数)を持つことができる

 この結果、Part1およびPart2に対応した産業用ロボットは、OPC UAを介して、例えば以下のような使い方ができるようになるだろう。

  • 生産実行システムから、生産状況に応じて異なるプログラムを複数のロボットに振り分け実行させる
  • クラウドシステムから、各ロボットの稼働/非稼働や個々の作業の実行/停止を遠隔監視、制御する

 ITネットワークから個々のロボットシステムを個別に監視・制御できるようになるため、同ネットワークを通じて外部環境と生産システムとの緊密な連携も可能になる。これをどのように活用して高機能・高効率な生産システムを構築していくのか、今後のロボットメーカーとユーザーそれぞれのアイデアや工夫が問われるだろう。

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