富士通は2020年8月5日、子会社であるデジタルプロセスが開発した生産準備業務のデジタル化支援ツール「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA デジタル生産準備 VPS(以下、VPS)」シリーズの新バージョンの販売を開始したとオンライン会見で発表した。
富士通は2020年8月5日、子会社であるデジタルプロセスが開発した生産準備業務のデジタル化支援ツール「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA デジタル生産準備 VPS(以下、VPS)」シリーズの新バージョンの販売を開始したとオンライン会見で発表した。
VPSはCADによる設計部門の製品データや製造装置や治具や工具などのデータを取り込み、工程レイアウトや自動化設備の配置、作業指示書の作成などを仮想空間上で行えるシミュレーションツールである。従来の試作ラインなどを用意した現物によるすり合わせや調整などの工程を大幅に低減できるという利点を持つ。
製品や自動化設備、作業指示書の作成などを担う「VPS Standard」は累計で690社5220ライセンスを導入しているという。「当初は電機・精密機器業界が多かったが、工作機械や半導体製造装置、医療機器、自動車用部品、車両などさまざまな業界に広がってきている。用途も従来は量産が中心だったが、中少量生産への対応が増えている」とデジタルプロセス VPSビジネス部 部長の根本昭二氏は語っている。また、工程レイアウトを担う「VPS GP4」については、累計で201社293ライセンスを導入しており、電機・精密機器メーカーや自動車メーカーの組み立て生産ラインで活用されているという。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により「生産技術部も在宅勤務が求められるようになり、生産準備の遠隔対応ニーズが高まっている。そのため引き合いは増えている」(根本氏)。富士通ではこうした動きを受けて、2020年4月23日〜9月30日までVPSの無償提供を行っているが「無償期間終了後も使いたい」とする声も多いという。「デジタルマニュファクチャリング領域は全体的に伸びているがVPSについてはそれ以上の引き合いがある。コロナ禍の影響が長期化することもあり、こうした変化は一過性のものではなく継続すると見ている。これらの変化に対応していく」と根本氏は現在の状況について語る。
需要が拡大する中でVPSの新バージョンでは、生産準備工程において製品の組み立てで使用する部品や作業手順、場所、設備や治工具、製造ノウハウといった工程情報をひも付けて蓄積・管理するBill of Process(以下、BOP)の作成機能を強化したことが特徴となる。
「VPS Standard」「VPS Manufacturing」では、BOPを過去機種モデルから新機種モデルに流用することを可能とした。これにより、「VPS」上での工程順序や工程情報を従来比2分の1の時間で作成可能となる。新機種モデルや別工場での同製品の工程計画時などに、工程検討を効率的に短時間で実施できる。
また、製品の製造工程における作業品質を管理するために作成されるQC(品質管理)工程図や工程FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)表に必要な情報を「VPS」上に表形式で入力できる機能も追加した。これにより、工程の管理方法に関する情報を含むBOPを「VPS」上で一元的に作成可能となり、これまでQC工程図や工程FMEA表を個別に作成していた手間や抜け漏れによる修正などを低減できる。さらに、設計変更対応機能を強化。CADから取り込んだ設計構成ツリーと「VPS」で作成した製造構成ツリーを並べて表示したり、設計変更前後の製品モデルの比較画面において変更された部品を色分け表示したりすることで設計情報の変更内容を把握しやすくしている。
「VPS GP4」については、「VPS Standard」「VPS Manufacturing」の製品モデルに設定したレイアウト情報や設備名から、設備を製造ライン上に自動配置する機能を搭載した。これにより、製造ラインのレイアウト作成時間が従来比20%削減できたという。また、生産性検討の際に、工程間の中間仕掛かり品を含む作業手順を検討する機能を強化した。中間仕掛かり品を容易に生成でき、生産ライン改善案の「VPS」上での作成時間が従来比5分の1に短縮できたとする。
価格は「VPS Standard V15L22」が400万円、「VPS Digital Mockup V15L22」が250万円、「VPS Manufacturing V15L22」が250万円、「VPS GP4 V11L22」が440万円で「今後3年間で2500ライセンスの販売を目指す。これには既存のバージョンアップは含めておらず新規顧客や、既存顧客のライセンス拡張などで目指す数字だ」と富士通 産業ビジネス本部 ものづくり&ERPビジネス推進統括部 統括部長の高橋慎氏は述べている。
生産準備ツールでは、海外のCADベンダーが周辺ツールと組み合わせた提案を強化しているが、富士通でも「モノづくりデジタル基盤である『COLMINA』に含まれる各種ツールとの連携を行いながらソリューション提案していく」と根本氏は語る。
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